かつては熊本の総鎮守といわれる藤崎八幡宮の参道そばに、蔵元を構えていた「ホシサン株式会社」。明治39年創業という約100年の歴史を誇るこの蔵元は、現在、清流・白川の辺に工場を構え、ミネラルウォーターとしても人気の高い阿蘇の伏流水、天草の天然塩など自然そのものを材料に味噌・醤油を製造している。社長の古庄完ニさんは、良い味噌造りは、「一に麹、二に炊き、三に仕込み」と言い、「良い味噌は良質の麹から生まれ、昔の職人たちは高級菓子に例えてカステラ麹と呼び、滑らかな風合いを大切にして来たんですね」と教えてくれた。そんな麹は、それぞれ蔵に住み着いた麹菌が大きく影響するそうで、職人達はそれを蔵ぐせと呼び大切に育てているそうだ。そんな職人達の確かな技術によって生まれる味噌・醤油だが、ホシサン株式会社では、歴史にとらわれる事なく、常に時代の最先端を行く機械を導入し、国から近代的な工場が表彰された事もあるそうだ。しかし、会社創立100周年を機に、原点回帰した完全手作り商品も製造するようになったのだが、その理由を古庄さんは、こう教えてくれた。「手作りという、キチンとした技術を持っていないと、機械とか色んなモノを入れても、その機械を本当に生かせないと思うんです。やはり味噌と醤油はこうやって出来るんだよって事を自分の体で覚える事が大事で、それは機械を使う時にも一番生かされると思います。逆に、こうした機械がいいという発想も出て来ないと思うんですよね」。古庄さんには、毎朝、必ず行う日課があるそうだ。それは、蔵の匂いを嗅いで麹菌の状態を確かめる事。古庄さんの長年の経験と技術から培われた、その匂いの違いや感覚というのは、最先端のテクノロジーが詰った機械でも、決して判別が出来ないそうだ。まず人があって機械がある…。モノ作りの醍醐味がそこにはある。
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