匠の蔵~words of meister~の放送

横山黎明弓製作所【都城大弓 宮崎】 匠:横山黎明さん
2012年08月25日(土)オンエア
島津氏発祥の地として尚武の気風を今も残し、古くから武道具づくりが盛んな都城は、特に大弓=竹弓の素材となる竹やハゼに恵まれたこともあり、全国の大弓の9割近くを生産するという。『横山黎明弓製作所』の2代目・横山黎明さんは、そんな都城で『都城大弓』を製作して27年、矢飛び、形の良さはもちろん、弦音と呼ばれる矢を放つ時に弦が弓を弾く音にまでこだわり、究極の弓を追い求めている。「幼い頃から工房で遊び、父の大きな背中を見ながら育ってきましたから、自然に弓師になることを志していました。ですから、少しでも良い弓を作る上でプラスになると思い、大学では機械工学を専攻したんですよね」。そうして横山さんは26歳で父の跡を継ぎ、父の言葉『納得するまでやれ』を実践。国の伝統工芸士に認定される。「『都城大弓』は、実際の競技大会で的を射る『道具』としての側面を持ちながら、旧来の素材や技法を今に伝える『工芸品』としての側面も持っています。現在はグラスファイバーなどの特殊素材の弓が台頭していますが、竹とハゼを素材にした『都城大弓』は、矢を放った後の衝撃吸収性や弦音の美しさに優れ、弓道家から高い評価を受けているんですよね」。こうした昔ながらの大弓の良さを今に伝える横山さんが、中でも大事にしているのは弦音だという。「弦に弓を番えて85センチから90センチぐらい引っ張りますよね。そして、手を放すと弓が放たれる訳ですが、その時に弦が返って弓に当たる音を弦音と言います。その弦の音が鈍い音ではなく、甲高いキャンという音が出ると、お客さんは喜ばれるんですよね。もちろん、弓の引き方や、放たれた時の状況にもよるのですが、弓は、そういった音にも良し悪しが現れる、不思議な道具なんですよね」。さらに、横山さんは、「弓は形にして完成ではなく、実際に弦を引っ張り、矢を放った瞬間に、弓道の弓としてキチンと仕事をするかどうかです」と言う。そして、そんなキチンと働く弓は、その音もまた美しいということだろう。「弓づくりの技術は、長い歴史の中で最も適した方法だけが残っています。そうした伝統を確実に受け継ぎながら、もし、この先、使い手が変わったとしても、伝統的なモノを受け継ぎつつ、時代が求める新しいモノの両方を作っていきたいですね」。

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