匠の蔵~words of meister~の放送

肥後象がん職人【肥後象がん 熊本】 匠:神田明子さん
2010年09月25日(土)オンエア
熊本の伝統工芸品・肥後象がん職人として活躍する神田明子さん。この肥後象がんは、鉄などの地金に、金や銀をハメたり打ち込んだりする金工の技法のことを言うのだが、熊本では江戸時代の象がん職人たちが、刀装金具の分野で肥後独特の象がんを生み出し、「肥後鍔」や「肥後金工」として高い評価を受けていたという。その垢抜けした“わび茶”の趣に通じる美しさに魅了され、神田さんは熊本県伝統工芸館の「肥後象がん後継者育成講座」で学び、現在は主にピアスやネックレスなどの装飾品を制作。肥後象がんの伝統的なモチーフに加え、猫や花などのモダンな雰囲気の作品も生み出している。「今の若い人たちは、地元にこんな素晴らしい工芸品があることを殆ど知りません。ですから、私の場合は、伝統的なデザインも大切にしながらも、今の人たちに受け入れられやすいデザインも取り入れています」。それは肥後象がんの伝統を受け継いだ神田さんたち職人の責任でもある。「工芸ですので、どうしても伝統を守っていくという風に言われがちなのですが、伝統というのは私たち作る側の人間のみならず、使って頂く側の方たちにもよっても守られているんですよね。ですから、その方たちに対して出来る恩返しといえば、やはり今の時代にマッチした良いモノを作っていくことしかないのかなと思います。例えば、私たち作る人間は、つい技術、技術となってしまうんですよね。凝ったこと、凝ったことと考えてしまいがちなんですが、果たして、それが求められているモノかなと考えることが大事だと思います。しかし、私を教えてくれた先生などは、0.1ミリの細い線が正確に入った化け物のような作品を作ります。やはり、そのような伝統的な技術が備わって、初めて自分の好きなことが出来ると思っていますので、その技術と求められるモノを追求するという、両方の感覚を持っていきたいな〜と思っています」。伝統工芸というと、どうしても守ることを第一に考えてしまう。しかし、神田さんは守ろうなんてハナから考えてはいない。何故なら神田さんが作る肥後象がんは、博物館に飾られるモノではない…伝統的な技術に裏打ちされた、今の人に愛され、今の時代を生きている作品だから。「肥後象がんは、金属故に最低でも50年、100年は残されますよね。ですから、これからも後世に残されて恥かしくないモノを作りたいと思っています」。後世で神田さんの作品は、どのような評価を受けるのだろうか。それはきっと平成という時代を象徴する肥後象がんとして評価されるに違いない。

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