匠の蔵~words of meister~の放送

長崎市役所庁内レストラン ル・シェフ【レストラン 長崎】 匠:坂本洋司さん
2010年10月02日(土)オンエア
長崎市役所の地下にある「長崎市役所庁内レストラン ル・シェフ」を手掛ける坂本洋司さん。地産地消をテーマに地の素材にこだわり、最近では坂本龍馬が長崎で食べた料理を再現するなど、西洋料理発祥の地でもある郷土の食文化に貢献。料理人として現代の名工の称号を戴き、長崎を代表するシェフとして活躍する。「私はホテルのシェフを長年務めてきたのですが、当時の市長から『市役所の食堂を改革してくれ』とお願いされて、このル・シェフを始めました。最初はワンコインで食べられるような料理を作ったことがありませんでしたので、お断りしたのですが、市長から『1万円でも500円でも料理』と言われ決意したんです」。その時、坂本さんは料理人として一番大切なことを学んだと言う。「最初は食べに来る職員たちを驚かす料理を作ろうとサービス料理として、鴨のポワレや若鶏のオレンジソースのソテーなどを何百人分も用意したんですよね。普通なら3000円頂いても文句を言われないような料理でしたから、ワンコインなら飛ぶように売れると思っていたのですが、これがまったく売れない。仕方なくカツカレーとウドンにしてみたら、これに大勢の職員が飛びついたんですよね。その時に、自分本位ではないお客様本位の料理...お客様が求める料理とは何かということを思い知らされました」。しかし、坂本さんの手に掛かれば、カレーライスやハンバーグといったメニューも本格的な西洋料理の味に様変わり。今では毎日700〜800人の市民がレストランを訪れ、リーズナブルに極上の味を楽しんでいる。「我々の料理...作品というのは形として残せないものですよね。例えば陶芸師や造園師などの作品は形として残りますから、それに対する評価がしやすいんですよね。しかし、料理人で現代の名工が方が少ない理由は、おそらく、そういう風な形として残らないという部分が多いと思うんです。しかし私は、料理とは形には残りませんが、食べられた方お一人お一人の記憶に残る芸術だと思うんです。その人が食べる時に、『素晴らしいな、綺麗だな』とか『食べたいな』という感動を記憶に残す芸術だと思っています」。形が残らない無形という意味では、料理は伝統芸能と同じ。しかし芸術と言えば何やらお高い感じもするが、それは何も高級な料理のことを指す訳ではない。坂本さんの言う芸術とは、フレンチでもカレーライスでも、人の記憶に残る料理のこと。坂本さんが現代の名工に選ばれた理由は、どんなジャンルでも人が求める...人に求められる料理を作る、その卓越した技にある。「2010年6月に長崎県の陶芸、造園、建築、料理などの関係者で作る『匠の会』というのを設立して初代会長に就任したんですよね。いつまでも先人たちの財産に甘えるのではなく、異業種の仲間たちと一緒に切磋琢磨しながら、これからもっと長崎を元気にしていきたいですね」。

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