匠の蔵~words of meister~の放送

人形師 [福岡 博多人形] 匠:武吉国明さん
2007年09月22日(土)オンエア
1600年(安土・桃山時代)の黒田長政の筑前入国と、舞鶴城建築の際に集められた職人の手によって作られた素焼き人形が原型と言われる博多人形。明治時代になり、パリなどの国際的な博覧会で高い評価を受け、日本を代表する人形として、全国で初めて伝統工芸品に指定されたという歴史を持つ。そんな博多人形を作り続け、「新作博多人形展」で、「内閣総理大臣賞」を受賞した事もある名工・武吉国明さんは、「博多人形の特徴は、そのリアル性にある」と言う。そして、「そのリアル性の中に、品と色気を持っていないといけない」と付け加えた。確かに武吉さんの手によって生み出された、美人ものの博多人形からは、品と色気を兼ね備えた、年上の女性に憧れる少年の心にも似た、淡い感情が甦って来る。そんな武吉さんだが、魅力的な博多人形を作る為に必要なのは、技術ではないと言う。「博多人形を一つ作るのに、早いのでも20日位かかる。それを、ある時一晩でパァ〜と作ったんですよ。そうしたら、その人形が空前の大ヒットをしてね、その博多人形の偽物まで世に出回るようになって、裁判するほど大ヒットしたんですよ」。博多人形の世界は、時間をかければ、それと正比例して良い作品が出来る訳ではない。では、良い作品を作る為には何が必要なのか、武吉さんはこう分析する。「作品に邪念が無い事が大事です。一晩でチャッチャと作った作品が売れるのであれば、そうした方がいいな〜と思って、何回かそうしたんですけど、やっぱりそれは売れないんです。そういう心がないものは売れん。大ヒットした作品には、そこに本当の自分の心があったんです。そんなもんなんですよ。博多人形からは、どれだけ勉強させて貰ったか分かりません」。諺にもあるように、人間欲を掻き過ぎると良い事はない。どんなに美しく見える作品でも、そこに一つでも、作り手のあざとさが見えると、一気に興醒めしてしまうものだ。「はっきり言って博多人形は生活必需品じゃないんですよ。我々は一番先に削られる仕事をしているんです。でも、それじゃあ我々は困ります。だからこそ、本当に心を込めて作らないと、人は博多人形を見ても魅力を感じないと思うんです」。武吉さんが博多人形を作る時には、手間をかける、時間を掛ける、そして心を込める。その込められた心で博多人形が輝きを放つ。何故なら博多人形を買う人は、その心と輝きを買っているのだから。

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