2002年、日本中を熱狂させたサッカーの日韓ワールドカップ。「宮崎県でキャンプを行っていたドイツ代表チームが、私のハム・ソーセージを食べてくれてたんですよ。私はサッカーが大好きなものですから、それはもう嬉しくて嬉しくて…」。そうニコやかに語る「ハム・ソーセージ工房 イブスキ」の指宿徹さんは、佐賀県の三瀬で、本場ドイツの伝統製法を取り入れた石窯で燻製した、ハム・ソーセージを作り続けている匠である。本場ドイツのソーセージに魅了され、ドイツで修行した経験を持つ指宿さんは、日本とドイツの食に関する考え方の違いを、次のように語ってくれた。「日本人は何かと無添加、無添加って言いますけど、肉と言うのは結着を促すものを入れなくてはくっつきません。ですからドイツの基準法では、必要最小限の添加物を入れなくてはいけないという法律があるんです。それは他の添加物を入れさせない為の法律で、無添加ではなく低添加という考え方なんですね。」日本では肉の結着を促す為だけではなく、甘味を出す為に砂糖を入れるなど様々な添加物が入れられている場合もあるそうだが、ドイツでは、この法律のおかげでソーセージの味が守られているそうだ。指宿さんは無添加を求めてくる客に対して、「うちのソーセージは、無添加ではありません。低添加です。」と自信を持ってハッキリと伝えているそうだ。「日本には魚を美味しく食べさせる文化がありますが、ドイツには豚肉を美味しく食べさせる文化があるんですね。私は、それを伝えたいんです。それが僕の全てです。」そんな指宿さんの今後の夢は、生ハムを作る事だそうだ。「三瀬という自然の環境の中で出来る生ハムを作りたいんですね。自然の環境の中で作るのは難しいですけど、それが出来れば、この三瀬に来た意味があったという事の証明にもなりますからね。」
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