匠の蔵~words of meister~の放送

山荘 紗羅木 [大分 無農薬野菜] 匠:石井良秀さん
2006年09月30日(土)オンエア
大分の湯布院の街から車で10分程の場所にあり、湯布院で、唯一の自給自足の宿として知られている「山荘 紗羅木」。5000坪もの広大な畑に囲まれた山林の中にある、この宿に向かう途中の細い坂道の入り口には、「この先に必ず宿がある」との看板がある。主人の石井良秀さん曰く、「この先に本当に宿があるのか不安になる人が多い」そうだ。そんな外界から隔離されたような静寂の中で、季節の旬にこだわり、自給自足で完全無農薬の湯布院野菜を提供している石井さんは、農薬で父を亡くし、自身も体を壊してしまったという過去を持つそうだ。「やはり、その事が原因で健康を考えるようになりましたね。湯布院には湯布院の旬があるんです。その土地、その土地の旬が分かるようになれば、無理に農薬なんて使わなくても野菜は採れます。そう考えると有機農法は難しいものではないんです。」と石井さんは言う。しかし、石井さんが現在のスタイルにこだわる理由は、それだけではない。「よくこんな山の中やから、山菜が多いって言われるけど、山菜なんて1年に1回、食べればいいんです。それは何故かと言うと、冬の間に太陽高度が下がってくると、体の中からミネラル成分が出て行く訳ですよ。そのミネラルを補うのが、春の新芽にある苦味なんです。だから、その時期に体が山菜を欲しがる訳です。それを1年中食べたって全然美味しくもないし、いらんもんを食べるようなものですからね。そういうのは、ちゃんと分けていきたいと思っています。だから、旬というのは、その季節の旬が、そこに住む人の体の旬に合うかどうか…それが大切だと思うんですよ。基本的には、私は露地栽培が一番いいと思っています。出来るならば、私はここで種を蒔いて生まれ育った、決して上品でない野菜であっても、やっぱり湯布院の味がする野菜を作って行きたいですね」。旬にこだわり、完全無農薬野菜の自給自足にこだわるということは、言葉で言うのは簡単だが、決して易しいことではないし、困難と努力を伴う。石井さんの料理は、上品でもなければ派手でもないかも知れない。しかし、それを食べる人の為に馳せ走るという字のごとく、本当のご馳走だった。

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