福岡・糸島半島の西端にある場所で、海水100%のミネラル豊富な塩を作り続けている「工房 とったん」の平川秀一さんは、元々料理人をしていたそうだ。そして店で美味しい塩と出会ったことから、それじゃあ自分でもと塩作りを始めたそうだ。「調味料の最たる調味料が塩でしょ。だから醤油にしてもソースにしても必ず塩が入っていますけど、塩無くして料理っていうのは、出来ないんですよね」。しかし、もちろん最初の頃は、そんな簡単にはいかなかったそうだ。「簡単だと思って始めたんですけど難しいですね。塩っていうのはシンプルで簡単だからこそ難しいんですよ」。そして自然に左右される塩作りは、いつも完璧という訳にはいかない。「やっぱり失敗する時もあるんですよ。ですから、失敗を失敗と認めるというか。やっぱり塩が出来るまでに、すごく、そのバックグラウンドで、何日もかかるんですね。そしてようやく出来たものなんですよ。ですから、ほんと言ったら売り物にしたいんですけど、美味しくない場合があるんですよね。そう言う時に潔くダメならダメと海に戻しています」。言うのは簡単だけど結構難しいことだ。しかし平川さんには、塩作りのプロとしてのこだわりがある。「半分泣き入りながら捨てますよ。でも、美味しくないものを作りたくないんで。だから、やってる事は、料理を作っている事となんら変わらないスタンスですね。」平川さんが「塩の料理人」と呼ばれている事の由縁が、この言葉に凝縮されている。空気、水、そして塩…。料理で言えば、そんな基本にこだわる事が、一番のご馳走になる。そして、そのご馳走は、自然から生まれている。そんな平川さんの夢は、やはり自然に関することだった。「夢というか。これ以上海が汚れないように、色んな方面で考えて行きたいなと思いますね」。
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