匠の蔵~words of meister~の放送

版画家【版画 宮崎】 匠:河辺一周さん
2012年09月29日(土)オンエア
宮崎日本大学高等学校芸術学科長、河辺一周さん。宮崎デザイン界の第一人者としても知られ、ポスターや包装紙、学校や企業のマークなど、これまで100点を超える様々な有名デザインを手がけている。「教員生活も半世紀近くになりましたが、若い頃からそれだけではなく、デザイナーになりたいという思いを強く持っていました。そうして個人的にデザインを手がけてきたという訳です」。そんな河辺さんの手がけるデザインの特徴は、大胆な構図と鮮やかな色彩の美しさにある。「色の美しさは配色の問題です。例えば赤の横には青を置く、反対に青の横には赤を置くなど、系統が同じ色を並べずに描くことで、独特の美しさが生まれるんですよ」。しかし、河辺さんは「デザインはただ美しいだけではいけません。あくまでも情報を伝えるツールですので、情報が伝わらなければ、どんなに素晴らしい作品に仕上げても意味がありません。一方で絵画の場合は、自分の感性や芸術性のみで勝負することが出来ます。そこがデザインと絵画の違いです」と、教員、デザイナーの肩書きに飽き足らず、いつしかシルクスクリーンという手法を用いて、花や女性をモチーフにした版画も制作するように。「数ある絵画の中で版画を選んだのは、ただ単に版画が好きだったというだけです。そして、花や女性をモチーフにしたのは、やはり美しいモノが好きなんでしょうね。ですから街を歩く時は、どうしても女性や、その女性の着ている洋服の模様に目がいってしまうんですよ」。そんな河辺さんの版画は現在、『イギリス大英博物館』、『オーストラリア州立博物館』、『町田国際版画美術館』に収蔵されている他、『ソウル国際版画ビナーレ』では優秀賞を受賞するなど、国際的にもその芸術性が高く評価されている。「新しいことにチャレンジすることに凄く魅力を感じるんですよね。ですから作品が半分出来上がったら、もう次の作品に取り掛かりたくなってしまうんです。今よりも次の作品、次よりもその次の作品がもっと良いモノになると信じていますので、どこまでいっても終わりがありません」。そうして河辺さんは、71歳となった今でも数々の版画展に新作を出品し続ける。「私の技法はすべて手描きです。私は手描きが好きですからコンピューターは使いません。コンピューターを使えばキレイな線を描くことが出来るし、ムラのない色を塗ることも出来ます。しかし、それはただキレイだな〜という無機質的な美しさでしかないんですよね。私の目指すのはコツコツと描いた美しさです。手描きの中にある温かさや質感までもが含まれた美しさ、そして得も知れぬ物凄さ、それが私の表現したいモノなんですよね」。それは、ただの美しさではない。河辺さんの作品にあるのは、奥深さや味、迫力といったモノまでが加味された、言葉では言い尽くせない美しさ。「やはり、どんな作品でも、その中にどれぐらい心が入っているのか。感動が入っているのか。そこですよね」。

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