八重山地方の名産品『八重山蒲鉾』を製造する石垣島の蒲鉾店『マーミヤかまぼこ』の代表、金城力さん。過去に全国約2000社の蒲鉾店が出品した『全国蒲鉾品評会』で、最高の栄誉である農林水産大臣賞を2度も受賞するなど、卓越した製造技術と素材の良さが高く評価されている。
「八重山で蒲鉾が製造されるようになったのは戦前のことなんですよ。当時、沖縄本島の糸満市から八重山に移り住んだ人々が石垣島の近海でアオブダイの漁を始め、そのアオブダイの白身が蒲鉾と相性が良かったことから蒲鉾産業が発達したそうです。沖縄本島では赤身の鰹で蒲鉾を製造するのが一般的なんですが、蒲鉾はやはり白身が一番美味しいと、今では沖縄本島の方が『八重山蒲鉾』を土産に買って帰ることも多いんですよ」。そんな『八重山蒲鉾』を『マーミヤかまぼこ』では1945年から製造。生地に人参と牛蒡を混ぜて作った一口サイズの『たらし揚げ』や棒状の『丸ぐわぁー』などの定番商品を始め、『モズクかまぼこ』『島とうふかまぼこ』『にんにくかまぼこ』『チーズかまぼこ』など、様々な新商品も開発しているという。
「私は『マーミヤかまぼこ』の蒲鉾の味は、お客さんの味だという風に思っているんですよ。店では対面販売が基本ですので、昔からお客さんが『ちょっと味が薄いんじゃない』とか『もっと、こうした方がいいんじゃない』とか声をかけてくれるんですよね。もちろん自分が信じる味を大事にしているんですが、一方では、そんなお客さんの声にも耳を傾けながら、少しずつ改良を重ねて蒲鉾を製造してきましたからね。これはもうお客さんの味ですよ。石垣島で『マーミヤ』の金城といえば誰でも知っています。『あ〜マーミヤの長男、次男ね』という具合にですね。そういう馴染みの強い味方が、この店にはたくさんいますので、本当に心強いですし、そんな人々との付き合いを大事にしながら、日々、蒲鉾と向き合っています」。それは古き良き、地元の人々との気のおけない付き合によって育まれた八重山の味。その味は常連客を喜ばせようと、新たな味への挑戦も忘れない金城さんによって、さらに進化し続けていた。
「新商品は定着するまでが大変なんですよね。お客さんは例え『美味しい』と思っても直ぐには買ってくれません。やはり今まで食べていた定番商品というのは安心ですからね、どうしてもそちらの方に手を出してしまうんですよ。しかも新商品が定着すると、今度は他社のお客さんが『アナタたちもこういうの作らないの?』と要望して、必ずその店でも作られるようになりますからね。ですからこの業界では発案者が一番難儀するんですよ」。現在は世界を視野に『八重山蒲鉾』の普及に取り組んでいるという金城さん、その座右の銘は『切に思うことは必ず遂ぐるなり』という道元禅師の言葉。「新商品を開発するのが楽しい」と、生みの苦しみをも喜びに変えて、八重山の味を世界に届けたいと切に願う金城さんの想いが花開く日も近い。
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