匠の蔵~words of meister~の放送

デュッセル【ハム・ソーセージ 熊本】 匠:杉本和喜さん
2014年11月01日(土)オンエア
豊かな自然に囲まれた阿蘇郡小国町の街道沿いに工房を構えるハム・ソーセージ専門店『デシュッセル』のオーナー、杉本和喜さん。ハム・ソーセージの本場ドイツで、職人の最上位の資格である『フライシャーゲゼレ(食肉職人養成課程修了資格)』と、『フライシャーマイスター(衛生管理職人養成資格)』を取得し帰国。平成22年に自らの店を開き、以来、日本人では取得者がほとんどいないというドイツの国が認めたマイスターとして、豚肉本来の旨味を引き出した体に優しいこだわりの商品を製造する。
「もともと実家が酪農を営んでいたんですが、私はただ継ぐだけでなく、これからの時代は経営の多角化、いわゆる6次産業化が大事だろうと思っていたんですよね。その頃にテレビでハム・ソーセージのマイスターの資格がドイツで取れるということを知り、そこでドイツに渡ろうと決意したんですよ」。そうして杉本さんは18歳で単身ドイツに渡り、約10年間の修業を経て、見事、マイスターの資格を取得したという。
「一番キツかったのはドイツ人に認めてもらわなければならないということでしたね。ドイツ人は日本人と似ていて非常に真面目ですから、ただ与えられた仕事量をこなすだけでは、なかなか認めてくれないんですよ。やはり大事なのは自発的に仕事に取り組む姿勢ですよね」。そうして身に付けたドイツ人も認める技術によって生まれる杉本さんのハム・ソーセージは、なるべく添加物を入れずに作られるという。
「普通に塩漬けにしたり、香辛料を入れたり、ボイルしたり、燻煙したりする加工技術だけで、ある程度は消費期間を長くできるんですよね。でしたら私は、そういう技術だけで消費期間を長くしたいと。それ以上は添加物を入れなくては長くならないというのであれば、そこは諦めて、お客さんに納得して買って頂ければイイなと思うんですよね」。杉本さんは国が認めている添加物で、すぐに体が悪くなることはないが、何十年、何百年と、次の世代にまで及ぼす影響が分からない以上、やはり入れるのには抵抗があるという。
「それこそドイツなどは歴史が長いからですね。何百年前の人もそうやって加工して、添加物などを一切使わなくても、冬場にちゃんと保存できるような食料を作っていましたからね。そういう技術があるのであれば、その技術で消費期間を伸ばした方が、体には優しいと思いますからね。こんな緑豊かな小国にお客さんが何を求めてやって来るのかというと、やはりそんな自然や純朴な人々に代表される優しさだと思うんですよ。だったら添加物は入れない方が、優しい商品ができると思いますからね」。そんな杉本さんの商品は、地元産のもみじ豚をはじめ、酪農を営む実家のジャージー牛乳や椎茸などを使用して作られている。
「私はお客さんが喜ぶ商品であるのと同時に、生産者も喜ぶ商品を作りたいんですよ。地元の生産者の皆さんが一生懸命育てた素晴らしい食材を預かって加工して、お客さんに届ける訳ですから、ガッカリさせるような商品は作れませんよね」。そんな杉本さんの店には現在、高校生の頃に杉本さんに触発され、ドイツでパン製造のマイスターの資格を取得したという職人も働いているのだが、週末と祝日には、その職人の焼いたパンを使ったサンドイッチやホットドッグも登場。2人のマイスターの豪華な共演は小国の新名物となっている。
「私は『神は細部に宿る』という言葉が好きなんですよ。完璧な仕事はあり得ないかも知れませんが、完璧という言葉がある以上、これからも細部までも完璧な仕事を目指していきたいですよね」。

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