匠の蔵~words of meister~の放送

みね屋工房【伝統工芸 沖縄】 匠:高嶺幸子さん
2011年11月05日(土)オンエア
味わいのある風合いと、素朴で温かみのある美しさを併せ持つ、沖縄・八重山地方の伝統工芸品「ミンサー織り」や「八重山上布」などを製造・販売する工房「みね屋工房」の代表、高嶺幸子さん。「風土を染め、ロマンを織る」を織りの心とし、地元に根付いた手織りの文化を守り続ける高嶺さんは、結婚後、育児の真っ只中にいた27歳の時に、戦後途絶えていた機織の技術者を育てる県の育成講座を受講。昭和54年に課程を修了し、翌年、自らの工房を立ち上げる。「私の場合は祖母が機織の職人でしたので、家に道具が残されているなど機織の存在が身近にあったんですよね。最初は内職のような形で反物のみを織っていたのですが、暖簾も織ってくれなどと言う、お客さんの要望にすべて応えていった結果、ホテルでも売られるようになり、現在のような規模に成長していったという訳です」。工房では希望者が高嶺さんの元で1年間の講習を受け、その後、それぞれが自宅で即戦力となって商品を製作。自らが歩んできた道と同様、育児や家事を行いながら、自らの夢を実現したいと考えている人を様々な形で応援する。「現在では織り、染め、販売と総勢150人余りの方が、工房の戦力として携わっています」。そうして、大勢の人々の力を集結し、高嶺さんは絣模様を昔ながらの花織りにした「花織りミンサー」を始めとする多くの人気商品を開発。新たな伝統工芸の世界を切り開いている。「ミンサー織りや八重山上布は着物だけではなく、洋服やテーブルセンター、タペストリーや携帯電話のストラップなど、時代に合わせた形に姿を変え、生き続けています。伝統工芸品の世界は、どこも後継者がいないという話を聞きますが、伝統工芸品であろうとも、やはり現在の生活に合わせたモノ作りを行うことが大事だと思います」。そう語る高嶺さんだが、頑なに手織りにこだわり続けるなど、その手法まで現代に合わせようとはしていない。「今でこそ機械の動力織機があるのですが、昔は皆、手で織りをしていましたよね。そして多分、健康や長寿、使う人が幸せになるようになど、そのような想いも一緒に込めて織っていたと思うんですよ。機械では想いを込めることは出来ませんが、人間が織ると『ありがとうございます。アナタが幸せになるように、良い柄を織らせて頂きます』というような、想いを込めることができますよね。ですから、今でもそこに惹かれて、手織りにこだわっています」。高嶺さんは、そもそもミンサー織りや八重山上布の柄の一つ一つにも、纏う人の健康や長寿、そして、アナタが好きといった意味などがあるという。形あるものはいつか色褪せてしまうが、そこに込められた想い、ストーリーは永遠に色褪せることはない。

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