福岡・天神の繁華街にある居酒屋「博多ラーメン shin−shin」のオーナー、中牟田信一さん。博多の名物屋台で腕を磨き、この店をオープンさせた中牟田さんは、屋台出身者ならではのリーズナブルかつこだわりの味を提供し、観光客のみならず多くの地元ファンの心を掴んでいる。「この店は屋台をそのまま持ってくるイメージでオープンさせました。対面商売である屋台のように、お客様への気遣いやコミュニケーションを大事にしていますね」。そんな店の基本メニューは、やはり豚骨ラーメン。「ラーメン居酒屋と言われるように麺から広がるメニューが基本です。そして、その基本となるラーメンは、昼に食べるラーメンとお酒を飲んだ後に食べるラーメンとで、スープの味を少し変えるなど、やはり一番こだわっていますね。麺も信頼する製麺所にお願いしてスープに合う麺を作って貰っています。手作り麺を標榜する店もありますが、やはり何十年も麺作り一本で勝負をしているプロの麺が一番美味しいですからね」。地元・九州で採れた材料を天然水で煮込んだスープに、極細の麺が絡む昔ながらの博多豚骨ラーメンには、プロ達の技が凝縮されている。「麺、豚肉、鶏ガラ、野菜、水、どういう素材を使うかというのが、やはり味のポイントになります。しかし、良い素材を求め過ぎてしまうと、一杯1000円以上のラーメンになってしまいますよね。それはラーメンではないというのも自分の考えの中にあるんですよね。たかがラーメンじゃないですか。お昼に食べるラーメンであって、お酒を飲んだ後に最後に食べるラーメンであって、そういうラーメンのポジションをキチンと守っていかないといけないと思います。しかし、たかがラーメンと思うのはお客さんであって、作る側はされどラーメンという感じで、しっかりと作っていかないといけないと思います」。ラーメンが大好きな日本人は、人気ランキングに行列、ご当地ラーメンに頑固な店主と、何かとそんな話題で熱くなる。しかし、過熱するラーメン業界の中で、ともすれば敷居や値段を高くする店もある中、人気店ながら、たかがラーメンという中牟田さんの精神にはハッとさせられる。ただ、「博多ラーメン shin−shin」の人気の秘密はそれだけではない。「お客さんには自信のあるスープを必ずお出ししていますが、ぶっちゃけると、今でもコレだという確信がないんですよね。ですから、やはり今でも色んな所にラーメンを食べに行って勉強したりとか、スープ小屋で研究したりとかしています。いつになったらコレだというスープが出来るのかと考えますが、もしかしたら、そうやって最高のスープを追求している事が、常に一番自信のあるスープをお出ししている事に繋がるのかも知れないですね」。
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