匠の蔵~words of meister~の放送

農家れすとらん 田子山 [熊本 食事処] 匠:小野聖子さん
2007年10月20日(土)オンエア
熊本は阿蘇外輪の田子山から名付けられた「農家れすとらん 田子山」。その田子山を背にした場所に座するこの店は、雄大な阿蘇の草原に放牧された赤牛を味わう事が出来る食事処という事で、県内外から多くの人を集める。オーナーの小野聖子さんは、「元々、赤牛の飼育と農業を行っていたんですけど、グリーンツーリズムの一環と言いますか、都会の人にその土地に来て、その土地のモノを味わって頂きたいという思いから、およそ10年前にこの店を始めたんです。おかげで、これまでは生産する喜びしか知りませんでしたが、直接お客様の顔を見る事で、食べて頂く喜びも知る事が出来ました」と言う。今や熊本を代表する食材として、全国的にも知られるようになった赤牛は、赤身の味が濃く、肉本来の旨みが味わえると評判なのだが、お店を始めた当初は赤牛の認知度も低く、大変だったそうだ。「今でこそ、有名になりましたけど、それまでは赤牛と言っても、誰も相手にしてくれませんでした。安心・安全を考え、一生懸命に育てた赤牛が、これだけ多くの人に愛されるようになった事は本当に嬉しいですね」。そんな小野さんは、この赤牛が阿蘇の自然を守る為に大きな役割を果たしていると言う。「阿蘇の草原は牛と人との半共生で保たれているんですよ。牛がいないと、あの草原が守られないという事を畜産をやって初めて知りました。熊本県の水は川の水ではなく、すべて阿蘇の伏流水で賄っているんです。そして、その伏流水は、阿蘇山の草原があることで蓄えられているんですよね。牛は草を食べます。そうすると、また新たな草が生えて来る。そうやって1000年も前から、この広大な阿蘇の草原は保たれているんです。赤牛を沢山食べて頂くと、赤牛を沢山飼育する事が出来るので、草原も守られるという訳です」。日本では、もっぱら霜降りの肉が高級とされている。しかし、広大な阿蘇山の起伏ある草原を駆け回り、阿蘇のエネルギーを吸収した赤牛は、口の中でトロけるのではなく旨みとコクに溢れていた。

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