匠の蔵~words of meister~の放送

パラダイスプラン【塩の専門店 沖縄】 匠:西里長治さん
2015年11月07日(土)オンエア
沖縄、宮古島の海の成分を粉末にした『雪塩』を製造し、全国で国内最大級の塩の専門店『塩屋(まーすやー)』を展開する『パラダイスプラン』の代表、西里長治さん。以前まで宮古島でレストランや土産物店を営んでいたという西里さんは、塩の専売制度が廃止された後、1999年より自然塩の製造に取り組み、2000年に『雪塩』の販売を開始。以来、『雪塩』のみならず、塩に関連する様々な商品も世に送り出すなど、塩の可能性を追求し続けている。
「当時、我々は『宮古島の海の粉末をつくる』というコンセプトで『雪塩』の製造をスタートしたんですよ。ただ食べられるだけの塩ではなく、『海の粉末をつくる』という考え方で行こうじゃないかと。ですから我々の塩づくりに対するアプローチというのは、いかに海の成分をそのまま商品にできるか!そして、いかにそんな海そのモノをお客様に届けることができるか!ということなんですよね」。そうして西里さんは、海水を釜炊きする通常の製塩法とは異なる特殊な技法で、サラサラとしたパウダー状の粒子の中に、18種類ものミネラルを含む『雪塩』の開発に成功。その数はギネスブックに登録されているという。
「海の成分をそのまま再現しようとすれば、通常では取り除かれる『にがり』も入る訳ですから、都合の悪いこともありますよね。『にがり』というのは苦味成分ですから。事実、『雪塩』を食べて、微妙に苦味を感じる方もいらっしゃいますが、それも海の特徴だと割り切っています」。そうしてこれまでの塩の概念を覆す程、塩独特の『とがり』のない、まろやかで旨味溢れる海の粉末の開発に成功した西里さんが、そこまで宮古島の海にこだわる理由は、青く光輝く宮古島の海をみれば、説明の必要はないだろう。
「宮古島の海の粉末を、世界中のお客様に届けたいという私の想いの根本には、素晴らしい自然に恵まれた、故郷である宮古島を元気にしたいという想いがあるんですよ。ひいてはそれが沖縄の元気に、九州の元気になれば面白いと思っているんですよね」。西里さんは例えばイタリアの小さな鞄メーカーが世界のブランドとなれたように、流通や交通の便が発達した現在は、仕事の拠点が地方であることは決してハンデではないという。
「様々なアーティストが地方から発信し続けているように、地方であることはアドバンテージだと捉えて、これからも宮古島から世界に発信していこうと思っています。小さな島に住む隣のオジさんが、実は世界に塩を発信しているなんて子どもたちが知ったら、俺たちにもできると夢がもてるじゃないですか」。そう語る西里さんだが、仕事が順調になればなる程、宮古島に居られる時間が少なくなるというジレンマがあると笑う。
「実は『雪塩』の品質は販売以来、少しずつ向上しているんですよ。それは我々が常に『ベスト』ではなく『パーフェクト』を目指しているからなんですよね。『ベスト』というのは今まで我々がつくってきた中での『ベスト』ですが、それが『パーフェクト』かと聞かれれば、少し違うのかなと。確かに過去にないくらい『ベスト』な商品をつくったとしても、もっと何かできたよねというのが必ずあるハズなんです。大リーグで活躍されているイチロー選手などは、どんなに素晴らしい記録を打ち立てたとしても、もっと何かできたのではないかという思考を持ち続けていますよね。我々もそのような思考を大事にしなければならないと思って、日々、上を見続けています。ですからどこまで行っても終わりがありませんよね」。例え3割以上の打率を残したとしても、打てなかった7割を反省するイチロー選手のように、常に上を目指す努力を怠らない西里さんたちの手によって生まれる『雪塩』は、いつまでも進化し、真っ白な雪のような輝きを放ち続けることだろう。
「レベルアップする為に上を見続けるのは当たり前ですが、今のレベルをキープする為にも上を見続ける必要があるんですよ。例えば飛行機は水平飛行している時も、機首は常に3度上へ上がっていますよね。機内を歩くと分かると思いますが、機首の方へ行くと上り坂を上がるような感じになるじゃないですか。ですから我々も常に目線は上だと。上を見て一生懸命努力をして、初めてレベルキープだと。そして、さらに今まで以上の努力をして、初めてレベルアップだと思っています」。西里さんは現在『塩屋』を中心に、粉末にした『わさび』や『抹茶』、『アオサ』や『にんにく』などと『雪塩』を合わせた『合わせ塩』シリーズを始め、塩を使った様々な美容商品や菓子商品なども販売する。
「私には塩の業界の渦の中心になってやろうという野望があるんですよね。自分自身の可能性を、どこまで追求できるのかという話なのかも知れませんが、そういう考えが、他の人がやらないような、これまでの調味料の概念を崩すような商品を開発する原動力に繋がっていると思います」。そんな西里さんの座右の銘は、江戸時代の米沢藩主、上杉鷹山の言葉『為せば成る、為さねば成らぬ何事も』だという。
「できないことはやらなかっただけなんです。ですから、これからも塩のカテゴリーに捉われることなく、できるまで諦めることなく歩んでいこうと思っています」。その大らかで自由自在な発想と、どこまでも上を見続ける姿勢を失わない西里さんの姿に、沖縄を感じた。

| 前のページ |


| 前のページ |