今や長崎の名産品として欠かせない「長崎角煮まんじゅう」を生み出した食品会社「岩崎本舗」の岩崎栄司さん。旨味調味料を使わず、丹念に時間をかけて出汁の旨味を沁み込ませた角煮を、フワフワの皮に挟み込む「長崎角煮まんじゅう」は、長崎の卓袱料理の一品・東坡肉を、「もっと手軽に」「より美味しく」と願い、約20年前に初代が考案。現在は二代目の岩崎さんが、その味をさらに進化させた商品「六日仕込 角煮まんじゅう」「大とろ角煮まんじゅう」を展開している。「どんな職種でも、スターが生まれる前は変化が求められますが、スターが生まれた後は進化が求められると思います。特に長崎角煮まんじゅうのように毎日食べるモノではない嗜好品は、ナンデモ屋さんのモノではなくて、専門家が進化させたモノが欲しいと思うんですよね。それは僕も同じですから、お客様も同じだと思うんです。やはり嗜好品は、自分では作れないようなモノ、専門家が匠の技を駆使して深く掘り下げたモノがイイ。だからこそ、嗜好品を製造する会社として角煮まんじゅうを追求していくべきだと思いますし、その技術は会社のノウハウとして蓄積されて、さらに磨かれていきますからね」。そんな志のもと生み出された新商品たち…岩崎さんは350円の「長崎角煮まんじゅう」より、49円高い「大とろ角煮まんじゅう」は、実質的には値下げになると言う。「今の時代は350円のモノを300円にして売ろうという風潮ですよね。この“大とろ角煮まんじゅう”は、それを399円で販売していますが、会社の内部的に考えると値下げになるんです。それは何故かと言うと、人件費や原材料を考えると、本当は450円から500円で売らなければいけない商品なんですよね。350円を300円にすれば一時的には売れると思います。しかし、それが当たり前になると、すぐに元の状態に戻ってしまうんですよね。ですから同じ値下げを考えるのであれば、お客様に新しい価値観を与えることができる商品で勝負する。そうすることで、会社の未来も作られていくと思います」。モノが売れないと言われる時代に、ただ商品を値段下げするのではなく、さらに原材料にこだわり、手間隙と時間をかけた商品で、客に値段以上の満足感を与えようとする岩崎さん。その長崎らしいというべきか…どんなモノでも受け入れる、開かれた自由で大らかな匠の発想は、この先、「長崎角煮まんじゅう」を、どのように進化させるのか楽しみだ。「よく食べ物を『こうして食べて下さい』って指定されることがありますが、私は、お客様が一番美味しいと思う食べ方をして頂ければイイと思うんですよね。ある意味、固定観念を持たないことが、美味しい料理を作る秘訣だと思います。これは、こうだと決めている商品は、そのままの商品が永遠に続きますが、『あ〜そうだね〜』と受け入れる体制を持っている人が作る商品は、もっともっと進化する可能性がありますからね」。
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