匠の蔵~words of meister~の放送

外園金物店【鍛冶屋 鹿児島】 匠:外園保さん
2009年11月07日(土)オンエア
薩摩藩の武士によって育まれた技術を受継ぐ、加世田鎌と加世田包丁を製作する鍛冶屋「外園金物店」の外園保さん。外園さんは、機械の力を一切借りず勘と経験だけを頼りに、日本刀と同じ手法で切れ味の良さが特徴の伝統ある加世田の刃物を製作する。「刃物を製作する工程で肝となるのは、最終的な熱処理だと言われています。真っ赤に焼けた刃を、水で冷やし、最後にもう一度火にかけるのですが、その処理の仕方で商品の価値が決まります。その時の温度は、それぞれの鍛冶屋が秘密にする部分なのですが、殆どは機械で管理しています。しかし、伝統に重きを置く加世田の場合は、そういう設備に頼らず、長年の勘と経験を駆使して、今も手作りで作っているんです」。還暦を越えてなお、日々、目と耳を研ぎ澄まし、凄まじい集中力で火と格闘する外園さん。そこには少しの邪念も入り込む隙間がない。「常に真剣勝負です。邪念が入りますとモノがうまくいきません。刃物を打つ時は何も考えず集中する。何か考えていたら当たり前の商品は出来ませんし、下手すると怪我をしますからね」。毎月1日と15日に塩と酒で仕事場を清め、刃物と向き合うと言う外園さんは、そうして生み出された刃物の切れ味を面白い言葉で表現する。「私たちは、刃物の仕上がりを“辛い”“甘い”という言葉で表現します。“辛い”刃物は刃が硬く、長持ちするのですが研ぎにくい。逆に“甘い”刃物はは刃が柔らかく、長持ちはしないのですが研ぎが楽なんです。刃物には、そういう良い点と悪い点があるんですよね」。そんな中、外園さんは加世田の刃物を「切れ味がよく長持ちするが研ぎやすい」と、その両方を兼ね備えたバランスの良さを強調する。どんな世界にも、呼び方は違えども甘口、辛口の類がある。
その加減を知らないのは論外だが、知って最適の加減を見つけるのが難しい。職人であれば、例えばよく切れる辛口の作品を作りたいのが常のような気がするが、誰が使うか分からないものだけに外園さんは遊びや甘さも残している。その加減...塩梅がイイ。「加世田の刃物の良さは、昔から職人さんたちが一生懸命技を磨いて受継いできたものです。私の使命は、芸術品としてではなく、一般の大勢の人たちに、これが加世田の刃物だというのを広めていく事だと思っております」。

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