宮崎市の閑静な住宅街の中、民家の中に溶け込むようにある「蕎麦 ゆかわ」。主人の湯川修さんは、「食は心」と、ゆったりとした気持ちで蕎麦を堪能して頂ける、この場所を選んだそうだ。なるほど、民家の中でくつろぐような落ち着いた店内、主人と女将の人柄など、落ち着いた、アットホームな雰囲気の中で、蕎麦を堪能する事が出来た。湯川修さんは、定年を迎えてから、夫婦二人、独学で、昔、お母さんが作ってくれた蕎麦の味をたよりに蕎麦屋を始めたという話をしてくれた。「昔は、蕎麦は間食だったんですよね。子供の頃、母がよく蕎麦を打ってくれてたのを覚えてて、私も手伝っていましたから、蕎麦屋を始めようと考えたんです」。そんな湯川さんは、定年後に蕎麦屋を始めたという事をハンデとは思わず、蕎麦作りに対する厳しいこだわりを持っていた。「自分の作ったモノに個性を持たせたいっていう事にこだわりがあります。普通の掛け蕎麦っていうのは、ザル蕎麦の出汁を取る時に二番出汁を取って、ザルのかえしを薄めて混ぜたので出すっていう風に言われています。でも、色々本を読みますと、昔は掛け蕎麦用のツユを作っていたというのがあったんです。だから私は、大変なんですけど、ツユも全部、毎朝、それぞれの蕎麦に合わせたツユを作っています」。そんな湯川さんは、お客様に言われた言葉が印象的だったと言う。「お客様にえびの蕎麦っていう田舎蕎麦を作ってますがと言うとなんや普通の掛け蕎麦に、あんた地鶏を二つ三つ乗せちょるだけやろって言われたんです。やはりお客様にとってはそういう事なんですよね。ですから、私はいや、そうじゃありませんという事をお話した事がありますね」。シンプルなものだけに、結果はすぐに仕事に現れる。丁寧さやこだわり…つまるところ折角来て貰うんだからで、どうするかという事だろう。「やっぱり、それはそれ、そういうものというモノをピシャっと作りたいという事ですね。折角、食べに来て頂けるんですから、この蕎麦のツユをちょっと変えてコレが出来てるとか、そんなんじゃいけないと思うんですよ。やっぱりこれはこれで作りましたと、そういう個性を持った品物をお客様には出したいという事ですよね。何でもそうでしょうけども、自分が手をかけただけの事じゃないのかな〜て思うんですね」。
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