匠の蔵~words of meister~の放送

木原製作所【薩摩彫金 鹿児島】 匠:木原純信さん
2011年03月12日(土)オンエア
伝統ある川辺仏壇の飾りの技術を活かした金属工芸品「薩摩彫金」を製作する「木原製作所」の木原純信さん。木原さんは錫や金、銀、銅などを素材に、卓越した技術と洗練された造型感覚を、酒器や小皿、アクセサリー製造などに応用。それは、伝統的な職人の仕事の中から生まれた彫金工芸の新しい形として注目されている。「800年の歴史を誇る川辺仏壇ですが、近年は安価な中国製品に押され、川辺仏壇を製作する職人の数が少なくなってしまいました。そこで川辺仏壇の飾りの技術を、他にも活かせないものかと考え、平成の時代になってから薩摩彫金に取り組むようになりました」。木原さんは昭和32年に独立。以来、半世紀以上にわたり心を込めて仏壇を製作。その技術を磨いてきたと言う。「仏壇と言うのは人様が買って拝む商品なんです。そこに心が込められてなかったら商品として失格です。素直な気持ちで仏壇と向き合い、そこに魂を込めてきたつもりです」。漆や金箔、蒔絵、彫刻など職人技と、日本的伝統美の集大成とも言える川辺仏壇。木原さんは「代表作は無い」と、今もさらなる技術の向上に励み、努力を惜しまない。「職人というのは、ただただ作ることが大事だと思います。地べたを這ってコツコツと、上を見ずに足元見ていくことしか私には能力がない訳です。努力を惜しまず拝むような気持ちでタガネを握り、神様に拝むような仏様に拝むような気持ちで製作しています」。そうして技術をただ維持・継続させるだけではなく、時代のニーズに応えて「薩摩彫金」を生み出した木原さん。それはすべて経験の上にあると言う。「何事も経験が一番です。経験があればどんなモノでも生み出せますからね。経験もない人が口先だけでモノを言うのが、私は大嫌いですからね。自分で出来るようになって実績を積んでこそ、職人というのは認められていく訳です。私たちの仕事は学生の遊びではありませんからね」。学問なき経験は、経験なき学問に勝る...という諺があるが、島津公の時代から数々の卓越した工芸品を生み出してきた鹿児島県。その伝統は21世紀になっても途切れることなく、木原さんのよう人たちによって受け継がれている。

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