鹿児島県奄美大島の伝統的な木船「アイノコ船」を造る唯一の船大工店「坪山船大工店」の坪山豊さん。奄美を代表する島唄名人としても知られる坪山さんは、以前紹介した奄美大島の郷土料理店「郷土料理 かずみ」の西かずみさんの師匠でもある。「島唄は、島の自然と歴史を語る一番の教科書でもあるんです。そんな島唄と同じく、木船も大切な島の文化ですから、これからも守って行こうと思っています」。そんな坪山さんは、強化プラスチック製の船が主流の中、自然素材で造られる木船にこだわり、これまで2千を超える「アイノコ船」を造ってきたそうだが、長年木と触れ合って来た人ならではの話をしてくれた。「50年以上も木船を造り続け、材木とお付き合いすると、本当に木が生き物になるんです。自分の仲間になるんですよね。ですから、私は材木を注文で取り寄せずに、直接、足を運び、自分の目で見て木を選ぶようにしています。そうすると選ぶ時に反発する木と同調する木が分かるんですよ」。そんな坪山さんは、「こんな話をすると人からおかしくなったんじゃないかな〜と思われる」と笑う。しかし、「自分に反発する木を間違って買ってしまい、船を造った場合、必ず木が割れてしまうんです。木というのは生き物ですからね、木が嫌がったら船も何にも造れないんです。木はそういう魂を持っています。そして、木とそんな付き合いになると、他のどんな便利な材料があっても造ろうという気にはなりません。木でなければ」と力強く言い切る。確かに木は生きている材料であるからこそ、常に均一とは限らない。均一なプラスチックで造られた船は、必ず80点は取れるけど120点は取れないだろう。しかし、そんな均一ではない木材で造られた船は、50点もあるけど120点もある。常に120点を造れる木を見抜ける目を持つ坪山さん。これこそ長年培った経験以外の何者でもない。そんな坪山さんは、国土緑化推進機構が選出する「森の名手・名人100人」にも選ばれている。これからも豊かな自然溢れる奄美大島で、島唄を奏でながら島の伝統を守り続けていく事だろう。。
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