匠の蔵~words of meister~の放送

千束【ぬか床 福岡】 匠:下田敏子さん
2009年11月14日(土)オンエア
200年以上も昔から受継がれる上質の“ぬか床”を使用する、博多の老舗ぬか床専門店「千束」の店主・下田敏子さん。“ぬか床ドクター”“ぬか床マイスター”との異名を持ち、全国の家庭の“ぬか床”を診断するなどしながら、その素晴らしさを世に広めている。「“ぬか床”の植物性乳酸菌には、整腸作用や肌が綺麗になるなどの効能があり、今は健康に良いスローフードとして、若い女性にも注目されているんです。何百年も昔から、日本には“ぬか漬け”があるのですが、そのミクロの世界の正しさ素晴らしさが科学的に解明されたのは、本当に最近のことなんですよね。やはり昔から行われている事は正しいと...私たちは、それを受け継がなくてはならないと思っています」。そんな下田さんによると、“ぬか床”は、意外にも「ズボラな人間でも簡単に管理が出来る」と言う。「“ぬか床”は、毎日かき混ぜないといけないので面倒だと思っていらっしゃる方が多いのですが、植物性乳酸菌は空気に弱いので、2〜3キロの小さな樽だと、実はかき混ぜない方が良いんです。かき混ぜるという行為は、増えすぎた乳酸菌を減らす為にすることなんですよね」。自らも毎日、天気予報で温度と湿度を確認し、少しでも空気に触れさせないように、「毎日、食べる時間に合わせて微妙に調整しながら、旬の野菜を漬けている」と言う下田さん。その店では、「商売抜きで広めたいので採算度外視」と言う、下田さんの漬けた極上の“ぬか漬け料理”が味わえる。「大学の先生たちは、科学的な裏づけをしてから、ああだこうだと言って下さいますが、美味しくないですもんね、彼らがやっている“ぬか床”は。確かに菌の数は理想的なのですが、やはり野菜を漬けてないから美味しくありませんもんね」。温度や湿度などの数値にこだわりながらも、結局は経験値がモノを言う。そんな下田さんに受継がれた200年の経験値には、どんな数字や論理も敵うはずがない。「例えば同じ日に、同じように5樽作ったとしても、その5樽が、一度も同じように出来上がった試しがありません。親は一緒なのに5人子どもがいたら5人5様違うじゃないですか。それと同じだと思います。しかし、これが生きているという証拠で、本当に“ぬか床”の世界は不思議で面白いと思います。この1グラムの“ぬか床”の中に10億の菌がいる。知れば知る程、やればやる程、ハマりますよね」。

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