匠の蔵~words of meister~の放送

喜多つげ製作所  [鹿児島 薩摩つげ櫛] 匠:喜多忠男さん
2007年11月03日(土)オンエア
江戸時代には、「櫛になりたや薩摩の櫛に、諸国娘の手に渡ろ」と歌われた薩摩つげ櫛。鹿児島にしか生えない薩摩つげの木を材料に作られるその櫛は、その美しいデザインもさることながら、抗菌作用があり、滑りがよく静電気を起こさず切れ毛になりにくい等、数多くの優れた特徴を持つ。その薩摩つげ櫛を作り続け40年になる「喜多つげ製作所」の喜多忠男さんは、「元々、つげ櫛作りは、江戸時代に薩摩武士の内職として始まったのですが、その優位性と希少性から、彼女には最高のプレゼントだったと思いますよ」と言う。しかし、そんなつげ櫛も、今や時代と共に過去のものとして忘れ去られようとしている。喜多さんは、毎年、全国の即売会などに足を運び、その良さを広める事に力を注いでいるそうだ。そして、薩摩つげ櫛の伝統を守る為に、新たな試みもスタートさせた。「今若い人は、皆ブラシを使っていますよね。ですから、つげでブラシを作れないものかと実用新案登録を取りまして販売しています。当然、若い人には櫛以上に受けていますね」。一般的に伝統工芸品と言えば、ただそれだけを作っていれば良いように思われる。しかし、現実は伝統の上にあぐらをかいていられる程、甘くはない。「今、鹿児島には、つげ櫛を作っている所が3軒あるんですが、どこも櫛だけでは生活が厳しいと思います。だからと言って櫛とかけ離れた商品を作る事は違うと思います。そうすると、やはりブラシやカンザシといった商品になるんですよね。この薩摩つげ櫛の伝統を守る為にも、副業的な事は必要ではないでしょうか」。そんな喜多さんは、今は機械が手伝ってくれる事で、昔に比べ随分作業が楽になったと言う。「昔習った薩摩つげ櫛作りは、物凄くしんどかったんですよ。でも、現在の武器を利用する事によって、より良い製品が出来るようになりました。そして、それが後継者の為になり、薩摩つげ櫛の伝統が守られていく事に繋がると思うんです。だからと言って、全部が機械ではなく、ただ鋸と鉋とかペーパーの3つ位なんですけどね。最後の仕上げは、やはり人間の手に委ねられます。ですから、それをどう使うかという事なんです」。いたずらに作業を面倒にする必要はないし、良い物を作る為に簡略化出来る所は、道具を使って簡略化すればいい。それより、作りたい物、その絵が見えている事が重要だ。

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