匠の蔵~words of meister~の放送

戸隠【うどん 宮崎】 匠:猪野龍治さん
2009年11月21日(土)オンエア
宮崎名物・釜揚げうどんの老舗店「戸隠」の二代目・猪野龍治さん。長野県にある蕎麦の名所と同じ店名の為、蕎麦屋と思って来店する客も多いそうだが、「戸隠」は昭和42年の創業以来、釜揚げうどん一本で勝負する。「高千穂の岩戸伝説に登場する岩戸を、神様が隠したのが長野県の戸隠だと言われるように、長野県の戸隠は宮崎と因縁のある土地なんですよね。蕎麦とうどんの違いはありますが、同じ麺を扱う店として戸隠と名づけたそうです」。そんな「戸隠」の麺は、釜揚げうどん専用の自家製麺を使用。ツユの出汁は日本料理の技法を基本とし、昆布は利尻、鰹節は枕崎のものを吟味。宮崎ではポピュラーなイリコや椎茸は使っていないと言う。現在は猪野さんが、誠実に嘘を付かず、日々研鑚を重ね、そんな多くの人たちから愛される宮崎の味を父親から受継いでいる。「二代目として跡を継いでスタートした時に、常連のお客さんが『親父と違う』とか『まずい』と言うんです。親父と同じように作り、親父からも『大丈夫』と言われても、お客さんは『駄目だ』と言うんですよね。それは、二代目として跡を継いだ人たちの宿命だと思うのですが、比べる相手がハッキリといますから、前の人と同じレベルだと、前の人以下でしか見られないんですよね。だからと言って、新しいモノにチャレンジし、いくら美味しいモノを作っても『前と違う』と言われるので意味がありません。同じモノの中で、もうワンランク上に行けるように努力して、やっとスタートラインに立てると思うんですよね。ですから、今の『戸隠』の味は、実は親父が作っていたものとは全然違うんですよね。しかし、お客さんは、前と同じ味だと感じていると思います。」。例えば、仕事で得意先を引き継いだ時、前任者を超えないと、結局、いつまでも「何とかさん元気?」という具合に言われ、いつまでも自分は「何とかさん」の次でしかない。同等だったら前の人の勝ち。何事もそれを超えて初めて引き継いだ...受継いだと言える。この「戸隠」の釜揚げうどんの味は、確実に進化して、猪野さんに代が受継がれていた。「変化はしないが進化はしていくことが大事です。後はお客さんが、どう判断してくれるかですよね」。

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