匠の蔵~words of meister~の放送

熊本郷土料理 青柳 [老舗料亭 熊本] 匠:松村健司さん
2008年11月22日(土)オンエア
熊本城の本丸御殿で提供されている、熊本城下の食事を再現した料理「本丸御膳」を考案した、熊本郷土料理の老舗料亭「青柳」の料理長・松村健司さん。「本丸御膳はコンペで選ばれました。江戸時代の人たちが熊本城を見ながら、どんな料理を食べていたのかを調べるにあたり、現在の資料を参考にするのではなく、やはり原文が読みたいと思い、図書館で昔の文献を詳しく調べました。そうして試行錯誤を重ね、出来るだけ当時の味を再現しながら、若干、今のお客様の口に合うようにアレンジして出来上がりました」。そうして「本丸御膳」に取組む事で、松村さんは修行時代の事を思い出したという。「料理を美味しくするという技術は、今も昔も変わらないんですよね。そんな基本の大切さを思い出しました。江戸時代が基礎という訳ではありませんが、そこに立ち寄れたからこそ、今の自分の料理があると思います」。もともと「日本人なら日本料理を極めたいと思い、この道に入りました」と言う松村さん。改めて「温故知新」という言葉を胸に刻んだそうだ。そんな村松さんは、日本料理に大切な事は、「まず気を使う事」だと言う。「裏で仕事をしていたら、お客様の顔は見えませんけど、自分の師匠や兄弟子などに気を使う事によって、お客様に気を使う事に繋がっていくと思うんですよね。お客様に気を使うという事は、やはり食材に対しても気を使うという事に繋がっていくと思います」。一番身近な存在に対して気を使えない人間は、その向こう側にいる存在にも気を使えない。「同じように、自分が食べる賄いに気が使えないのでしたら、当然、お客様に作る料理には、気を使えないと思うんですよ。やはり人間、誰しも自分が可愛いじゃないですか。その自分が食べる料理で、冷や飯食を食べている人間が、お客様に対して温っかいご飯は出せないと思うんですよね。食材に対する優しさというか、料理は常に優しさじゃないかな〜と私は思います」。まず、自分の家が片付かないと、庭は綺麗にならない。そして、庭が綺麗でないと、その地区は綺麗にならない。さらに、地区が綺麗にならないと町は綺麗にならないと、そういう事は、段々と広がっていく。同じように、気を使うという原点を大切にした松村さんの料理は、暮らしに培われた、幹の太い伝統、文化として育っている。「日本料理は一生涯の仕事と思っています。これからも大胆細心に、お客様に愛されるように精進していこうと思っています」。

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