匠の蔵~words of meister~の放送

ガラス工房 ダンダン [佐賀 ガラス彫刻] 匠:川浪政人さん
2007年11月10日(土)オンエア
佐賀県内では、ガラス彫刻の分野で草分け的存在として知られる「ガラス工房 ダンダン」の彫刻家・川浪政人さん。川浪さんは、およそ20年前に、ステンドグラス作家である妻の洋子さんと一緒に、この工房を開いたそうだが、「ダンダン」と言う名は、洋子さんの「多くの人と楽しく暖談し、仕事の技は段々と、そして、皆の笑顔に、方言のありがとうと言う意味のダンダンを」と言う想いから名付けられたそうだ。そんな川浪さんは、サンドブラストと呼ばれる、高圧で噴射する砂をガラスに吹き付けて、温かみのある紋様をガラスに刻み込む。その作品は陽の光にかざすと、様々な表情を見せて味がある。「ガラス彫刻に、ややこしいロジック(理論)はいらないんですよね。見た人が楽しくなる作品じゃないと、それは僕の作品じゃないんです」。そんな川浪さんは、「一つの作品を作るのにどの位の時間をかけるのかと聞く事はナンセンスだ」と言う。「日本人の感覚として、『制作に1カ月もかかったモノらしいよ』って言われると、非常にその作品が優れたモノのように錯覚をするんですよね。僕は、それは嘘だと思うんです。5分で出来ようが1カ月かかろうが、出来上がった作品を見て『良いな〜』って感じたモノは良い訳ですよね。個展をしてる時も、必ず制作時間を聞かれるんです。そんな時は、『1カ月で作った方がよければ、1カ月で作りますよ』って言うんですよね」。見る側の人間は、その作品の良し悪しを感じれば良い訳で、手間隙かかっているから良いモノという偏見は捨てなければ、本当に良いモノとの出会う事は出来ない。「だから私は、『アナタが望む日にちを言ってくれれば、きっとそれに間に合わせると思います』と言います。でも『いつでも』って言われると、やる気がしないんですよね。普通、欲しいと思ったら直ぐにでも欲しいのが本当でしょう。『義理で頼んでるな〜』って気がすると嫌なんですよね。お付き合いはね、日常の生活だけのお付き合いでいいじゃないですか。無理して私の仕事にまでにお付き合いする必要はないんですよ」。そんな川浪さんにお付き合いや遠慮は野暮。「好き」、だから「欲しい」が素直で最高の賛辞なのだろう。そして、川波さんは、「こんな僕の事を大好きな人もいれば、大嫌いな人もいるでしょうね。でも、まともな人間が少なくなった今、こんな変人がいてもいいでしょう」と笑う。川浪さんは、自分に正直に真っ直ぐに生きているだけだ。そこには作品同様、ややこしいロジックなんてない。それが変かどうかは、おのずと答えが見えている。

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