細かな点を打って絵を描く点描の技法を用い、村の祭祀を司る神人(かみんちゅ)であった祖母から幼い頃に聞いたという、自然と神々の会話を基にイメージした作品を生み出すアーティスト・大城清太さん。自らを“点描画家”ではなく、“天描画家”とし、天使のような翼を持つ胎児や、満月に向かって水面を跳ねている人魚のような女性などがモチーフの、まさに天の力を感じさせる幻想的な世界を創造する。「水彩や油画などアートの世界には様々な技法があるのですが、僕はそういう技法にあまり興味がないんですよね。基本的に僕は、絵を描く事が好きという訳ではなく、点を打つ事が好きなんですよね。僕は午前中の部屋を閉めきった環境の中、息を止めて点を打つのですが、その間は、雨の音や風の音など自然の音しか耳に入らず、自分が海の中にいるのか、空の上にいるのか分からなくなるんです。僕はその瞬間がたまらなく好きで、それが癖となって続けているという感じですね」。そんな大城さんが祖母の話を作品のモチーフとするのには意味がある。「自然と共に生き、自然から学び、自然と共存しながら生きてきた昔の人たち言葉というのは、今の人たちが忘れている“何か”を思い出させてくれると思うんですよね。ですから僕は、そういう人たちのメッセージをバックグランドとして作品を描いています」。ここ沖縄に受継がれてきた“何か”をバックグラウンドとし、“人と人”“人と自然”の繋がりを様々な姿で表現する大城さん。その作品は美術館で飾るタイプのものではなく、博物館で飾るタイプのものだと言う。「例えば博物館にある土器は誰が作ったものか分かりませんが、その当時の時代背景などを教えてくれますよね。それと同じで僕の絵は、あくまでもメッセージを伝える為の間口であり、沖縄のバックグラウンドを伝えるものであり、美術館に飾り“大城清太がこの絵を描きました。見て下さい”という意識は全くありません」。大城さんは技術や技法、テクニックを自慢したい訳ではない。突き詰めて言えば、見て欲しいのは絵ではなく、そこに表現したお婆さんから聞いたストーリー。大城さんが打つ一点一点には、沖縄の歴史や自然...人に受継がれた想いが込められていた。
| 前のページ |