対馬西沖の韓国との国境付近で獲れる良質の穴子を『対州黄金アナゴ』の名でブランド化に導いた『対馬かまぼこ店』の代表、島居孝廣さん。対馬の穴子はブランド名にもある通り、『黄金色』に輝き、良質なエビ、タコ、イカ、そして、深海イワシといった良質な餌のおかげで大きく育ち、脂のノリやプリプリとした歯応えが日本一と評判を呼んでいる。「福岡で営業マンとして働いていた頃に、子どもの頃に食べていた対馬の魚の美味しさを改めて見直したんですよね。そして、福岡のみならず、全国の人たちにも対馬の美味しい魚を食べてもらいたいと考え、対馬に戻ってきました」。その後、島居さんは穴子漁などで生計を立てながら、平成9年に『対馬かまぼこ店』を創業。従業員のアイディアから生まれ、県知事賞を受賞した『あじカツ』というヒット商品も生み出すが、アジの漁獲量が減るなどの理由から、一時期、苦しんだという。「そんな苦しい時期に、かけてみようと思ったのが、対馬の穴子だったんですよね。質の良い対馬の穴子は、知ってもらえば絶対に売れると思い、穴子の松坂牛と呼ばれるようなブランド化を目指し、『対州黄金(たいしゅうこがね)あなご』と名付け、商標登録をしたという訳です」。以来、この『対州黄金あなご』を広く知ってもらう為、「人のやっていることはやらずに、オンリーワンでいこうと考えました」と、様々な手法で穴子を売り出した島居さん。「中でも食べ方の普及に力を入れたことが一番大きかったと思います。今までは穴子を買ってもらうことだけを考えていましたが、そうではなく、穴子を食べてもらうことを中心に考えをシフトしたという訳です。そうして、刺身や煮付け、穴子カツ、さらに、カルパッチョ風に食べる加工食品やレンジで温めるだけで食べられる穴子寿司などの開発に力を入れてきました。そうすると、少しずつですが、口コミで『対州黄金あなご』が広まっていったんですよ。食べ方を知って1度でも食べて頂くと、必ず美味しいと思ってもらえる自信がありましたからね」。その穴子の美味しい食べ方の研究を「いやしんぼですから、苦労なんかありませんよ」と豪快に笑う島居さん。売る為には、まず食べ方の普及をと、変幻自在に様々な加工品に姿を変えた、そんな島居さんの『対州黄金アナゴ』は、日本の食文化の豊さを感じさせる、まさに黄金色の輝きを放っていた。「とにかく海が大好きで、魚を食べるのが大好きで、それが今の仕事に繋がったんだと思いますね」。今後は「福岡に直売所を作りたい」という島居さん。その夢の実現に向け、島居さんは今日も座右の銘にある通り、『楽しみながら、コツコツと』歩んでいることだろう。
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