1925年に九州で最初に喫茶店として営業を始め、元祖である長崎風トルコライスやミルクセーキなどの看板メニューで、異国情緒溢れる長崎の街を演出する「ツル茶ん」の三代目・川村隆男さん。その店名は、羽を広げた鶴のように美しいと謳われた長崎港と、昔は"喫茶店"のことを"キッチャテン"と読んでいたことに由来。当時の長崎知事などが、その二つを掛け合わせて名付けたと言う。
「今は老舗と言われていますが、初代が店を始めた当時は、喫茶店と言う形は、まったく新しいモノだったんですよね。そうして時代、時代で新しいモノにチャレンジしてきた結果が、老舗として今に受け継がれているという訳です」。そんな「ツル茶ん」では、約50年前に長崎で生まれたトルコライスを当時からメニューに取り入れ、現在では8種類のメニューを提供している。「トルコライスは、大人のお子様ランチのような感覚で楽しい料理ですよね。今ではチャンポンや皿うどんに並ぶ、長崎の名物料理として長崎の約200店舗で味わえます。観光客のみならず、久しぶりに長崎に帰って来た方の郷愁を誘う料理としても愛されています」。そんな「ツル茶ん」のフルコースは、トルコライスを平らげた後にミルクセーキを頂くこと。その優しい味は、長崎県民のみならず、懐かしさなど様々な感情を呼び起こし、週末などは行列ができると言う。「旅行に来ている方というのは、時間が大切なんですよね。例えば長崎に3日しか滞在しない場合に、ウチに1時間も並んで時間を潰すのは勿体無いですよね。ですから、その1時間を意味のある時間にする為に、私は、龍馬のゆかりの地を紹介するパンフレットや、長崎ならではの貴重な品を展示するなど、待っている間も目で楽しんで頂いています。また、ゆとりがあれば、私が口頭で、「この日、亀山社中に行くと並びますよ」とか、「お子さん連れでしたら歴史文化博物館がオススメですよ」とか、「カップルでしたらグラバー邸に行ってハートを探して下さい」とかね、観光案内所ではないのですが、そういった地場の情報を少しでも提供出来るように心掛けています。ある意味、旅をされている方の
旅に参加したいという…そういう気持ちがありますね」。いくら景色や料理が素晴らしくても、そこに住む人の印象が悪ければ旅先での思い出は悪いまま…。長崎さるくなどもそうだが、日本と海外が繋がる唯一の窓口として、多くの客を招いてきた歴史を持つ長崎には、人を楽しませる、喜ばせるという文化が自然と根付いている。
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