ジンベエザメが悠々と泳ぐ世界最大級の大水槽を有する「海洋博公園・沖縄美ら海水族館」の館長・内田詮三さん。東京外語大学卒という経歴を持つ内田さんだが、デスクワークは向いていないと父親が経営する静岡県・伊豆の水族館で働くように。その後、福島県の水族館勤務を経て、37年前に沖縄に
移住。およそ40年も前から今や当たり前となっている笛を使ったイルカの調教を行うなど、半世紀に
及ぶ水族館人生を常に上を見続けながら歩んできたと言う。「人間の本性として、やはりでかい動物を
見てみたいという欲望があるんですよ。しかし、動物園で見ることが出来るゾウやキリンなどのでかい動物に、もはや未知の存在はあまりないですよね。しかし、海には人間の知らない未知のでかい動物が、まだまだいるんです。だからこそ、ジンベエザメなどを飼育出来る長さ35m、幅27m、深さ10m、水量7500tという当時では世界最大級の巨大なパノラマ水槽を完成させたんですよね」。しかし、内田さんは水族館の運営を大水槽のみに頼るのではなく、大小77もの水槽に、他では見ることが出来ない貴重な生物を飼育。また、数々の魅力的な展示方法で水族館を演出し、「沖縄美ら海水族館」を日本一の入場者数を誇る水族館に育て上げ、その取り組みが映画化されたこともある。「2008年度に入館者数が310万人を超え、ついにこの世界の王者である上野動物園を抜くことが出来ました。ずっと打倒、上野を目指していましたので嬉しかったですね」。そんな内田さんは、動物の長期飼育や繁殖の技術において、世界初となる数々の技術を開発。その技術の水準は今も世界最高峰を誇る。「イルカにしてもジンベエザメにしても、我々人間が悪いことしてるんですよね。彼らに『水族館来ない?』と言って、了解を得て連れて来た訳ではないですからね。ですから、乱暴な言い方かもしれませんが、自然保護だのなんだのと言って、動物園や水族館の人間が『私たちは動物に対して良いことしている』と言うのは偽善だと思っているんですよね。しかし、人間は生き物を食べるのと同じように、動物を見たいんです。現在日本には、動物園が90、水族館が67、合計157あるんですが、年間で6千万ぐらいの人間が、その動物園や水族館を訪れているんです。ですから、人間の為に飼う以上は、当然、出来るだけ苦しめないように飼育するのは当たり前だし、技術を磨き、キチンと飼わないといけないと思っています」。見る人がいる限り、動物を飼うのは必要悪だと言う内田さん。しかし、だからこそ肯定するのではなく贖罪意識を持って水族館を運営し、動物を通して自然保護の教育にも力を注いでいた。
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