今年6月に東九州自動車道・佐伯インターチェンジが開通した佐伯市にある海産問屋「佐伯海産」の社長・西田善彦さん。西田さんは、およそ2年前、映画「釣りバカ日誌19」のロケ地となった葛港の傍に、魚貝類から農産物まで佐伯の特産品が一堂に集まる直売所「さいき海の市場○」をオープン。さらに今年8月、佐伯の食材を生かした食事処「魚料理○海」を立て続けにオープンさせた。「漁船が泊まるだけの風景を変え、観光客が散策を楽しめる港にしようと2つの店を作ったのですが、まず地元の人に愛される店というコンセプトを掲げてスタートしました。そうする事で、県外からいらした観光客に、地元の人がそれぞれの店を勧めてくれますからね」。そんな直売所は今、開店前から多くの人が並び、食事処は、予約がないと入れないという状況が続いている。「佐伯の目の前に広がる豊後水道の海の幸、特に干物などは全国的に見ても素晴らしいものです。しかし、地元で食べている人たちは、その素晴らしさに気付いていないんですよね。ですから私は、ただ生産者と消費者を繋ぐ場所を提供しようと考えただけなんです」。そんな西田さんだが、まず直売所を立ち上げた時、人が集まる為の様々な工夫を散りばめていた。「商売の基本で、お客さんに喜んで貰うのは当たり前の事なんですよね。しかし、それだけではなく、ここは地域の特産品売り場ですから、生産者の方が、喜んで良い商品を納入してくれるような場所でないと意味がありません。ですから、生産者の方には、一切、テナント料や電気代、人件費などの経費を要求していません。なおかつ商品の値段も売りたい値段をつけて貰っています。私共の会社は、モノを作る訳ではなく、生産者とお客様の間に入って幾らなりか利益を頂いていますので、まずは品物が良い事、そして都会に比べて値段も安い、そんな双方に喜ばれるような場所作りを心掛けています」。西田さんが作り出したモノは、場所であり、空間であり、交流であり、取り引きである。今、港町・佐伯市は、人と人とが繋がり、新たな活気が生まれている。「佐伯は、特に観光地という訳でもないんですけど、自分が育った田舎は、こんなに良いモノを食べているんだと。そして、他所から来た人にも、『アンタ達も構わんけん、佐伯のモノを存分に食べて』という気持ちがもとですよね。やはり自分の郷土は誇りたいじゃないですか」。
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