亜熱帯気候の豊かな大自然を誇る奄美大島。その自然を保護しながら島の活性化を目指すエコツーリズムを実践する会社として、平成10年に設立された「奄美ネイチャーセンター ANaC」のチーフガイド・高美喜男さんは、観光客をガイドする傍ら、地元の人に奄美の自然の素晴らしさを再認識してもらおうと、約20年前からバードウォッチングを行っている。「この奄美大島には、奄美ならではの貴重な動植物が沢山生息しています。でも、その事自体を知らないし、知っていても見た事がないと言う島の人間が多いんです。自然を守るという事は、一人や二人の人間だけで出来る事ではないので、少しでも知って貰う事が一番大事だと思って活動しています」。まず、知らなければ何も始まらない。人は知れば考えるし優しくもなれる。「以前、この奄美大島に開発の波が押し寄せて来た事があったんですが、開発を進める側は、奄美大島の象徴的な動物クロウサギが大事か、人間が大事かと二者択一で迫って来るんですよね。でも、人間も大事だし自然も大事なんです。ですから、私はその設定自体がおかしいと思うんですよね。確かにいくら自然は素晴らしい、自然を守ろうと言っても生活が成り立たなければ説得力がありません。エコツアーの目的の一つには、自然を豊かにしながら生活出来るという所にもあるんですよ」。そんな奄美大島は、現在、自然と人間の調和を考えるように方向転換し、世界自然遺産の登録を目指すようになったそうだ。「エコツアーと言うのは、どんなに少人数でも、自然に負荷がかかります。やはり、その場所に住む鳥が逃げるし、足に付いた別の植物の種を持ち込んでしまうかも知れません。でも、エコツアーを体験した人が、自然は素晴らしいものだと感じ、地元の自然にも感心を持つようになれば、地球全体の事を考えると、その方が良い事だと思うんです。エコツアーと標榜する以上は、出来るだけ少人数で行い、自然に負荷を与えない事が大事ですが、体験した人に、自然の為に自分が何かやろうという気持ちを持って貰えるように活動しています」。自然を見せるのか、そのままにしておくのか、ここでも二者択一ではない。高さんは自然に負荷を掛けない程度に見せるという、ガイドとして一番難しい道を歩んでいる。その道の先には、高さんの願いでもある自然が島を活性化させるというゴールが待っている。
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