宮古島の卵、沖縄県産の砂糖、国産の小麦粉を使用した、こだわりの製法で菓子を手作りする洋菓子店『モンテドール』の代表、上地直樹さん。『全国菓子博覧会』で名誉総裁賞を受賞した『バナナケーキ』の他、2003年度の『菓子博』で金賞を受賞した『黒糖バナナケーキ』などを製造。その洋菓子たちは宮古島を代表する土産として島内外の人々に愛されている。
「この『バナナケーキ』は先代が作り始めたモノですが、当時はバナナと小麦粉を使用することが日本の国策でもあったんですよね。ですから日本全国の洋菓子店で『バナナケーキ』が作られていたそうです。そんな中、『モンテドール』の味が今も評価され続けている理由は、先代が研究を重ねて完成した材料の配合にあると思っています。多い順番に表示された一括表示を見れば、何が入っているのか分かるのですが、その材料の細かい配合が『モンテドール』の『バナナケーキ』の命なんですよね」。その先代が生み出したという配合の黄金比によって生まれる『バナナケーキ』は、ふわふわの食感と滑らかな舌触りが特徴で、口に含んだ瞬間、バナナの優しい甘味が口一杯に広がる。
「現在、バナナを名乗るお菓子はたくさんありますが、香料ではなくバナナ自体を使っているお菓子は少ないんですよね。ですから先代が完成させた『バナナケーキ』の味を受け継いだ私たちは、そのバナナなど材料の持ち味を、さらに高めたいと考えています。その場合、高くて甘いモノを使うのではなく、価格的にも現在の状態を保ちつつ、よりバナナを熟成させる手段を研究するなど、いまあるモノにひと手間、ふた手間かけて、さらに美味しくなるようにチャレンジしたいですよね。もちろん高い材料を使えば、美味しくなる可能性は高いと思います。しかし、そうではなく、先代が残してくれた配合比などを大事にしながら、僕ら裏方が難儀するということですよね」。その『バナナケーキ』は、島では出産祝いや合格祝いに贈られるなど、日常の喜びのシーンに寄り添うお菓子でもあるという。でも、そんな島の人たちの笑顔の裏には、定番の上にあぐらをかかず、人知れず難儀する上地さんたちの姿があった。
「継続は信用という言葉を大事に、地道に一歩一歩、歩んで来ましたが、いま『モンテドール』という名前を聞いて、県外の方々は『宮古島のバナナケーキね』と言ってくれるんですよね。宮古島を愛する地元の人間として、やっぱりそれが一番、嬉しいことですよね」。
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