匠の蔵~words of meister~の放送

2010年総集編1 工芸編 匠:
2010年12月18日(土)オンエア
2010年に取材した匠たちの輝く言葉を振り返る。今回は工芸の分野で活躍する匠。まずは、今年初頭に取材した、佐賀県の自宅車庫を改装した小さな工房で、ベフニックのロゴが輝くシンプルで低価格なハンドメイドギターを製作する「ベフニックブレスワーク」の合瀬潤一郎さんの話は印象深かった。「専門家が“これは良い”と言ってくれるよりも、沢山の人に使って貰うのが、僕は一番評価されている事だと思うんですよね。何百万円もするようなモノもある程、凄く値段の高くなっているビンテージのギターなどは、その殆どが当時の高級品ではなく、多くの人たちに使われてきた普及品なんです。高級品がビンテージとして現在に残っているのではなく、大事に使われてきた当時の普及品を、今のミュージシャンたちが、“これはイイね”と言って使っているからこそ、ビンテージとなる…。本当に良いモノというのは、そういうモノじゃないかと思います。高級品は皆大事に使うので、当然残りますよね。しかし、それが良いギターかどうかは、また別の話で、僕が目指すのは、とにかく多くの人に使って貰えるギターを作るという事ですね」。万人に愛される...それは、音そのものだけではなく、使い勝手や丈夫さなど、チェックポイントが多くなることを意味する。そこに挑戦する合瀬さんの話からは、モノ作りの人間のロマンを感じることが出来た。そして、今年も行った沖縄取材では、沖縄を代表する琉球ガラスの名工で、ガラスに封じ込めた気泡が小宇宙のような景色を見せる“稲嶺琉球泡ガラス”を考案した「宙吹きガラス工房 虹」の稲嶺盛吉さんの話が心に響いた。「戦後、我々が仕事を始めた時期は、ほとんど廃ビンをリサイクルしてガラスを作っていたのですが、廃ビンを活用すると、どうしても気泡が入ってしまうんですね。当時は、気泡が入ってしまうとガラス自体が駄目だと言われていましたが、逆転の発想で、この気泡を全部入れてしまえば芸術作品になりえると考え、“泡ガラス”の製作を始めたという訳です。最初は皆から変人扱いされましたが、私の感覚からすると温かみのある凄いガラスが出来たと。ですから、これは絶対に世の中に出してみせるという意気込みがありましたね」。失敗は、途中で放り出してしまうから失敗になる。それを逆手にとって膨らませてみることで、新たなガラス工芸のジャンルを築いた稲嶺さん。その独特で自由な発想に、沖縄を感じた。

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