2008年に取材した匠たち輝く言葉を振り返る。1回目は工芸分野で活躍する匠。まず一年前の冬に取材した、福岡は博多の伝統工芸品「博多鋏」の工房「高柳商店」の4代目・高柳晴一さんの言葉は印象的だった。「鋏の工程を確立するという事は、やってはいけない事を作るんです。そしてまた、やらなければいけない事というのも作るんです。工程を作るという事は、他の工程をしないって事なんですよね。しかし、その捨てられた所にですね、この鋏が良くなる可能性がなきにしもあらずなんですよね」。良いモノを作る為に編み出したルール。ただ、そのルールを守る事に縛られていては意味がない。ルールにはノリシロがないとダメで、そこに、もっと良くなる可能性が隠されている。もう一つは、秋口に取材に行った大分は湯布院で、木の温もりや優しさが伝わってくる器やお箸などを製作している工房「アトリエとき デザイン研究所」の時松辰夫さん言葉。「木材というものを使って、生活用具を作る時の基本は、人間の手の平に馴染む触覚が出発点になる訳です。そこから、生活の中に、ちゃんと収まっていくかという過程を辿っていく訳です」。なんでもモノの良し悪しは、その土台にあるというか…見た目は地味でも持った瞬間に、ふと「この器いい仕事してるな〜」って分かる。自分たちは今年いくつそんな仕事が出来たのだろうかと考えさせられた。
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