那珂川町の豊かな自然に囲まれた場所で、養鶏農場を営む「フジノ香花園」の藤野酬司さん。藤野さんは科学物質を一切含まない、微生物を加えた自家配合の餌で育てた鶏の卵を生産。「金太郎卵」と名付けられたその卵は生でも臭みが全くなく、一流ホテルのシェフやケーキショップのパティシエなど、大勢の料理のプロからも支持されている。「もともと微生物の勉強をし、バイオリサイクルの仕事に携わっていたのですが、これを実家で営んでいた酪農に活かせないかと思い養鶏場を始めた訳です。その後、飼料に微生物を加えると消化吸収率が上がることが分かり、数は少ないのですが10年間で約1000羽まで鶏の数を増やすことが出来ました」。そんな藤野さんの卵は、特別、黄身の色が濃い、黄身の味が強いなどという事はない。それは、昔食べなれた庭飼いの鶏の卵と同じ、自然に生まれた素朴な味。「私の卵は白身が美味しいとよく言われます。色を濃く、味を強く出そうと餌に変化を加えると、やはり臭みなどが、どうしても出てきますからね。私は、ただ当たり前のことを当たり前にしているだけなんです。よく藤野さんの所の卵は何が違うんですかって聞かれるんですけど、違うも何も、どれだけ鶏を元気に育てるか、それしか考えていないんですよね。鶏を健康に飼えば、必然的にイイ卵を産むっていうことが分かっていますからね」。イイ卵を作りたいなら、ごちゃごちゃ考えずに、卵を産む鶏を元気に育てることに力を注げばいい。至極当然なことだが、人はそれを忘れて、アレやコレやと考えてしまうもの。「実は野菜も卵も同じなんです。よく虫が食べた野菜の方が無農薬だからイイと言うじゃないですか。しかし、本当は力強い健康な野菜でしたら、力強過ぎて虫も食べきれない訳なんですよね。病気などが寄り付かないんですよ」。藤野さんが目指すのは、巷で言われている無農薬=イイモノという神話をも超える、本当の意味での安心・安全な卵。それは、多くの客から頂くという「子どもたちが金太郎卵でないと、卵かけご飯を食べない」という言葉にも表れている。そんな藤野さんの夢は「卵アレルギーの子どもでも食べられるマヨネーズ作り」なんだそう。そんな夢のような商品の完成する日が楽しみだ。
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