大牟田にある本格炭火焼きによる焼鳥専門店「やきとり二番」の女将、山下喜代子さん。昭和54年、三池炭鉱全盛の時代に店をオープンして以来、1本55円というリーズナブルな価格で焼鳥を提供。通信販売もされている、表面はカリカリで中身はトロトロの名物、焼豚足「おふくろ」を生み出すなど、地元の人のみならず日本全国のファンたちに愛される名店に育てあげる。「当時、幼かった3人の息子たちが、焼鳥が大好きだったんですよね。そんな焼鳥の店を家族でやれたらいいな〜という思いでオープンさせました。毎日の食事と、学校のお弁当は焼鳥だったという息子たちも、今ではたくましく成長し、しっかりと店を切り盛りしてくれています」。そうしてカウンター10席、テーブル2席だった店は、100人以上の客をもてなすことのできる店に成長。ガスは火で焼くが炭火は熱で焼く。創業以来、変わらぬ手間と値段で提供されるその味は、山下さんの優しい人柄が多くの仲間を惹きつけ、実現可能としているモノだった。「私は決して55円なりの焼鳥にはしたくないんですよね。55円だからこそ、大きく美味しく、手間隙をかけた焼鳥をお客様に提供したい。『これで55円は納得よね〜』ではなく、『これで55円?』と喜ばせたい、ビックリさせたいんです。納得ではダメなんです。ビックリされた時に、私たちは良かった〜と感じるんですよね。しかし、それはアルバイトも一緒に、全員の想いが一つだからこそ提供することができるモノなんですよね。一生懸命に頑張ってくれている息子たち、そして、スタッフには、本当に感謝しています」。そんな山下さんは、どんなに店が人気となろうとも、決して多店舗化することはないと言う。「スタッフが独立する時にサポートをしてあげようとは思いますが、家族が離れ離れになってまで、店を大きくするようなことは考えていません。焼鳥は家族の絆と言いますか、ここに店があるから、こうして大牟田という場所で、家族全員が一緒に生活することができる。こんな幸せなことはありませんからね」。ちなみに名物の豚足の名は、息子たちが「おふくろ」と名付けたそう。それは自分たちの現在の居場所である店を、山下さんが支え続けてくれたことへの感謝の意味が込められているという。最後に、漫画家として「ムルチ」という作品を発表後、若くして逝去された長男の三隅健さんに対する、多くのサポートに対して、「感謝を述べさせていただきたい」という山下さんの言葉を、この場を借りて紹介させて頂きます。
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