匠の蔵~words of meister~の放送

建具家具工房 松尾【工房 佐賀】 匠:松尾克美さん
2010年01月09日(土)オンエア
繊細で芸術的な組子細工の装飾を施した建具・家具などを製作する工房「建具家具工房 松尾」の代表・松尾克美さん。年に一度、全国の職人が匠の技を競う、平成16年の全国建具展示会の美術・工芸部門で、「八重麻の葉」「胡麻柄」と呼ばれる細工を施した「組子入間仕切板戸」が、最高賞の内閣総理大臣賞を受賞するなど日本有数の職人として知られている。そんな松尾さんが装飾に使う板は、千分の一ミリ単位の精度で加工する為、その組み合わせた板と板の間は、紙一枚の入る隙間もない。「内閣総理大臣賞を頂いた作品は、6万個の具材を使って作りました。しかし、最初から6万個使おうと考えていた訳ではありません。作ってみたら結果的に、“ああ6万個になったな”という感じですよね」。その数字は、ただ単に技巧を見せつける為のモノではなく、あくまでも人に何かを感じて貰う為に必要な装飾を施した結果でしかない。人はどうしてもアレもコレもとやりたがるが、見る人の印象に残るモノ...それは決してゴチャゴチャしているモノではない。「やはり展示会用と言っても、あまり込み入ったというか、ゴチャゴチャという感じでも駄目ですよね。私の工房で作られる作品は、大体“スッキリしている”と先輩などから言われます。ですから、ゴチャゴチャしたモノを出したことはありません。最終的に、“スッキリ仕上がったね”と言われるようにしていますよね」。そんな松尾さんは平成20年には黄綬褒章を受章。しかし、自らの作品をアピールすることは嫌いだと言う。「大体、自分の出来る範囲でやっている仕事ですからね。それを見てもらうだけで私は満足しています」。そんな松尾さんの信条は「常に客本位で作ること」だと言う。「作品が輝くのではなく、その家が輝く建具や家具でありたいんです。私は芸術家ではなく、職人でありたいですからね」。寡黙な印象の松尾さんからは、日々、地道な作業をコツコツと積み上げていく職人としての姿が伺えた。

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