匠の蔵~words of meister~の放送

天ぷら・割烹 のだ【長崎天ぷら 長崎】 匠:野田武一さん
2009年01月10日(土)オンエア
長崎の郷土料理として知られる長崎天ぷらを提供する名店「天ぷら・割烹 のだ」の大将・野田武一さん。長崎天ぷらは昔、一般の家庭料理として親しまれてきたもので、衣に卵の他、酒や塩、醤油などを好みで加え、必ず砂糖が入れられている。「小海老などをかき揚げ風にふんわりと揚げる長崎天ぷらは、明治に入った頃から各家庭で作られるようになったようです。衣に味があるので冷めても美味しいと、昔は弁当などにも入っていました」。今ではその味を伝える店も少なくなり、長崎市内でも野田さんの店を含め、3店舗ほどでしか味わえないそうだ。「砂糖は油を傷めますからね、私の店でも1度長崎天ぷらを揚げた油は、全て交換しています」。そんな野田さんのこだわりは、店の匂いや雰囲気にも現れている。「天ぷら屋が油臭いというのは偏見です。良い油を使っている店は臭くならないんですよね」。油にこだわり、当然、素材にもこだわる野田さんの揚げる天ぷらは、その卓越した技術も相まって、全国の美食家の舌をも唸らせる。しかし、「お客様にはそれぞれの嗜好がありますから、全てのお客様に自分の天ぷらを喜んで貰えるとは考えていません。それよりも、自分の味をしっかりと確立し、お客様がいつ来ても同じ味であることが大事だと考えています」と言う。そんな野田さんが確立した味を受け継ぐ弟子を指導する場合、まず「言われた通りにしろ」と言うそうだ。「若い人は、始めは言われた通りの事をするのですが、しばらくすると、直ぐ自分の勝手なやり方を始めます。やりやすい方法だったり、味を少し変えてみたり、要するに楽な方法を選ぶ訳ですよね。ですから私は、まず言われた通りにしろと言います。言われた通りの事が出来なければ、その次の事が出来る訳ありませんからね。私でも、まだまだだと思っているのに、途中でパッと来て、これは出来るような簡単なものではありませんからね。まず基礎を覚える事が大事です。基礎と言うのは、スポーツの世界と同じように、何回も何回も同じ事を繰り返して初めて身に付くものですから、決して理屈ではありません」。人は直ぐに何故?どうして?と聞きたがる。しかし、長年かかって確立された技術や人徳は、その人を一から真似ていく事で、おのずと頭ではなく体に刻み込まれる。すべては「出来るようになってから言え」という事だろう。

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