匠の蔵~words of meister~の放送

江崎泰平堂【老舗菓子店 長崎】 匠:江崎泰平さん
2013年01月05日(土)オンエア
対馬の銘菓として知られる『かすまき』を製造する、創業120年の老舗菓子店『江崎泰平堂』の江崎泰平さん。「『かすまき』は、江戸時代に参勤交代から帰郷した領主の無事を祝い、長旅の疲れを癒すために生まれたと言われる素朴な味が特徴の郷土菓子です。当時は貴重だった餡をたっぷりと入れて、日本ではまだ珍味だったカステラ生地を使うなど、朝鮮交易などで栄えた当時の対馬藩の栄華をしのばせる逸品なんですよね。今でもお正月やお盆なんかに、地元に帰省した人たちが買い求めるなど、郷土の味として愛されているんですよ」。ここ『江崎泰平堂』では、白餡を巻いた『かすまき』を考案するなど、明治23年の創業以来、そのバリエーションを増やしながらも、素材と製法にこだわり、伝統の味を守り続けている。「『かすまき』が愛され続ける大きな理由は、材料を惜しんでいないからだと思います。料理でもすべて同じだと思っていますが、やはりソロバンを弾いて、材料を惜しんでいては良いモノは出来ませんからね。ですから私は材料が1番で、腕が2番だと思っています。私の店では、そんなに特別な材料を仕入れている訳ではありませんが、手に入る材料の中では、1番イイ材料を使っています。材料を惜しんで味が落ちたら、お客さんは分かりますからね」。材料に嘘をつかず、半世紀もの間、技術の研鑽に励みつつ『かすまき』を焼き続ける江崎さん。それでもなお、腕は2番と語る職人の世界たるや、やはり奥が深い。「当然、腕は必要です。しかし、何十年とやってきても未だに納得することがありません。ですから正直言って、腕のことはあまり言いたくないんですよ。多分、死ぬまで腕のことは分からないでしょうね。ですから毎日が勉強です」。

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