匠の蔵~words of meister~の放送

熊須碁盤店【碁盤・将棋盤製作職人 宮崎】 匠:熊須健一さん
2010年01月16日(土)オンエア
宮崎の綾町で、原木の仕入れから製作・販売までの工程を、すべて自らの手で行う、全国有数の碁盤・将棋盤製作職人で、宮崎県伝統工芸師の一人でもある「熊須碁盤店」の熊須健一さん。「碁盤材に使用されるカシの木は、樹齢500年以上の自然が育んだ貴重な財産。仕入れた原木は、木取り、乾燥、加工、太刀盛り、それぞれの過程で、素材の良さを最大限に引き出していく」と、その製作には一切の妥協も許さない。「一回切り倒されたら木は死んでしましますが、碁盤、将棋盤として再び木を生き返らせるのが私たちの仕事です。そして、その木が喜ぶかどうか...木が喜んでくれれば、見返りとして、私たちも嬉しくなりますよね。その為には、木と真剣に向き合い、木の一番良い所を引き出してあげなくてはなりません。木を喜ばせ、人を喜ばせることが出来なくては、買う人も、その作品にお金を使ってくれませんよね」。そんな熊須さんの作る碁盤は、第34期の名人戦でも使用されるほど評価されており、過去、2000万円という高値で取り引きされたこともあるそうだ。そんな碁盤・将棋盤の良し悪しは、自然の木目の美しさ、そのバランスなどで決まるのだが、熊須さんは、「中には色を塗ったり、板を埋めたりして木目をごまかしているようなモノもある」と言う。「碁盤・将棋盤は決して安い買い物ではないで、やはりちゃんと自分で勉強してから買うのが良いと思います。そして、買う時に一番気をつけて見る部分...それは、売っている人です。もちろん碁盤・将棋盤を見る事も大事ですが、まずは人を見て、話をして判断することです」。本当に良い物が欲しいのであれば、やはり、それなりの努力は必要となる。「私たちも原木を仕入れに行きますが、ちゃんと勉強をしていない人は、やはり間違った買い物をしてしまいます。売る方も根性の悪い人がいて、問題のある部分を下に置くなど隠していることもありますからね」。しかし、熊須さんは、展示会などで自らの作品を並べる時は、必ず悪い方を前に出すと言う。「他所の方は良い方を前に出して展示していますが、私たちは悪い方を前に出して展示します。ですから私たちの作品は、お客様が買われた後にキャンセルされることは殆どありません。もちろん悪い方を前に出すというのは勇気が要りますが、私たちの作品の悪い方は、他所の作品の良い方よりも綺麗だという自信を持っていますからね」。仕事でも、良いことばかり言っていると、後で“ほころび”が出ることがある。逆にウマくいかなかった部分を自ら先に言っておくと、後はプラスの評価しか残っていない。ただ、熊須さんの作品の良くない部分というのは、他の人の良い部分よりも綺麗だということなのだが…。「どの仕事も難しいのですが、仕事がすべてを教えてくれますよね。これまで失敗を繰り返してきましたが、その失敗が色んなことを教えてくれたと思っています」。

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