匠の蔵~words of meister~の放送

Flover生産工房【洋ラン栽培農園 宮崎】 匠:眞鍋哲さん
2014年03月22日(土)オンエア
温暖な気候と年間を通して日照時間の長い宮崎で、熱帯原産の洋蘭の栽培を行なう『Flover生産工房』の眞鍋哲さん。
「Flover=フラバーとはフラワーと花を愛でる人とを合わせた造語なんですが、高価で栽培が難しい印象の洋蘭が、気軽に買える普段使いの花となるようにと、この名前で農園を始めたんですよ」。その温暖なハウスには、美しい『胡蝶蘭』をはじめ、『デンファレ』と呼ばれる品種の洋蘭が色鮮やかに咲き乱れ、訪れた人を出迎えてくれる。
「もともとサラリーマンになりたくないと思い、農業大学で花を学んだのですが、花の生産農家の現状は厳しく、10人中10人から止めておけと言われたんですよね。そんな中、ホームユースの洋蘭を栽培している友人の話を聞いて、洋蘭の栽培に興味を持つようになったのですが、洋蘭の栽培は10人中2〜3人は面白いと言うんですよ。だったら0%の世界より、20〜30%でも可能性のある世界にかけてみようと考えたんですよね」。そうして、花を愛し、家族を愛し、一家の大黒柱として、日々奮闘しているという眞鍋さんには、目指すべき農園の姿があるという。
「僕が花を作っていく中で大事にしていることは、人との繋がりなんですよね。お客さんに花を選んでもらうというより、まず自分を選んでもらいたいと思っているんですよ。『眞鍋くん、アンタのやから買いたいのよ』と言ってもらえるようになる為に、努力しています」。それは、例えば何かの工事を業者に依頼する場合、技術はもちろん、何より信頼できる人に工事をしてもらいたいと思うことと同じだという。
「花を買う時に、どこの花屋さんに行くというよりも『そういえば眞鍋くん、洋蘭作ってたよね。ちょっと使うことがあるから、何かイイのない?』と僕を頼ってきてもらって、じゃあ僕が、その中で提案するというような形ですよね。僕の農園にお客さんが求める洋蘭がなければ、他の農園を紹介するし、もちろん僕の農園にあれば買って頂く。そのような関係が築ければ、お互いにメリットがあると思うんですよね」。だからこそ眞鍋さんは、ただ花の栽培に力を注ぐのみではなく、客が気軽にハウスを訪れることのできる雰囲気づくりや、子どもたちに花に親しんでもらう為の活動などにも力を注ぐ。
「普通はハウスに人を入れることを嫌がる方が多いのですが、私の場合は積極的に人を入れて花に親しんでもらえるようにしています。そして、その時に、買わないと入りづらい、出づらいような雰囲気は作りたくないんですよね。また、幼稚園児に売り物にならない花を提供して、水に浮かべて遊んでもらっているのですが、それを見た人が自分たちの結婚式で、花をプールに浮かべたいと言ってくることもあるんですよ。昔は何もしなくても花が売れていたそうなんですが、今はそういう時代ではないですからね。人との付き合いを上手くやって、その人との関係の中で、次に繋がっていくモノを、さらに大事にしていくっていう...そこだけは曲げないようにしたいと思っています」。そんな眞鍋さんは、将来について明確な目標を持つことはないと笑う。
「明確な目標を持ち過ぎると、ダメだった時に抜け出せない気がするんですよ。こうなりたいという気持ちは持っていますが、こうあるべきだという気持ちはないですね」。『ライオンキング』に登場する『ハクナ・マタタ=スワヒリ語で、どうにかなるさ』を座右の銘に掲げる、そんな眞鍋さんの人柄は、美しい花同様に客の心を魅了し、農園の魅力の一端を担っていた。

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