八重山諸島・石垣島の珊瑚礁に育まれた、栄養豊富な海水のみを原料に塩を製造する『石垣の塩』の東郷得秀さん。東郷さんは1997年に塩の販売が自由化された後、仲間4人とともに島人たちが夕食の小魚(なぐら)をとる場所という意味で名付けられた、熱帯魚舞うエメラルドグリーンの珊瑚礁の海『名蔵湾』で塩作りを開始。現在ではその塩が、全国に流通する有名スナック菓子でも使用されている。「当時は減塩ブームだったのですが、塩は体に必要なモノなのに、なぜ減塩が叫ばれているのか疑問に思い、減塩ではなく適塩を意識したミネラル豊富な体に優しい塩作りを行おうと考えたんですよね。塩作りの場所に名蔵湾を選んだのは、石垣島だからどこでも海がキレイといったイメージで塩作りを行いたくなかったからなんです。僕は中学生の頃からスキューバダイビングで石垣島の海を潜り続けてきましたが、この名蔵湾は石垣の島の中でもテーブル珊瑚が何枚も自生するなど、特に豊かな自然が残されている海なんですよね」。その後、東郷さんは、1717年から同じ場所で塩作りが行われていたという資料を発見。また、2005年には名蔵湾が国際自然保護区=ラムサール条約に決定するなど、自分のやっていることすべてに合点がいったという。「僕たちが作る塩は、成分を一切無調整で、自然のままに作っているという自負がありますので、季節や月の満ち欠けによって味が変わるという特徴があります。よくお客様からどの季節の塩が美味しいのですか?と聞かれるのですが、季節による味の変化も楽しんでもらえたらなと思っているんですよね。今の時代はとかく、やれミネラルだとか、やれ○○の成分だとかが注目されがちですが、そういうことではなく、塩というのは本来、自然環境がベースとしてあっての仕上がりですので、ジャガイモや人参のような野菜と一緒で、その季節によって味が変化することは当たり前のことなんですよね」。東郷さんたちは、海に恵みをもたらす石垣の山々や、マングローブ林の保全にも力を入れながら塩作りに励んでいるという。そうして四季折々の味が守られている、まるで野菜のような『石垣の塩』。その味の違いを楽しまない手はない。
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