匠の蔵~words of meister~の放送

金波楼 [熊本 老舗旅館] 匠:松本寛三さん
2007年03月24日(土)オンエア
明治43年に創業し当時の面影をそのまま今にとどめる、熊本は日奈久温泉の老舗旅館「金波楼」。2010年に100周年を迎えるというこの「金波楼」は、今ではなかなか見ることが出来ない日本式三層建築や桃山形式の庭園など、古き良さをそのままに、訪れる人へくつろぎの空間を提供している。3代目当主、松本寛三さんは、この歴史ある建物を守る事への想いを教えてくれた。「この木造の三階建てって言うのが珍しい建物だし、これだけの大きさの建物を先祖から受け継いで来たんですから、それは大事に守って行かなきゃいけないし、お客様はそれを目当てにいらっしゃる方が多いですからね。そこには、やっぱり磨きをかけていかなきゃいけないからですね」。各部屋と廊下は昔から木製のガラス戸が使われ雨戸は全くない。また、サクラの木を使った床は、まるで鏡のような輝きを放ち、長年磨き抜かれてきた歴史を感じる。「よく廊下とか綺麗ですね〜っておっしゃって頂けるんですけど、磨かなければ、古いからオバケ屋敷になってしまうんですよ。古いけども快適に過ごして頂くために、じゃあ磨きましょうという事になる訳ですよね。中の掃除の仕方だけは、どこにも負けないと言う風に思ってやっています」。松本さんは、この床面を傷付けないように自動販売機やキャスター付きの旅行カバンなどは、毛布を敷くなどして細心の注意を払っているそうだ。「やっぱり本当これがウチの一番の商品だと思ってますから、商品に磨きをかけない事には、売れないですからね。全てじゃないですけど、まあ旅館の場合は温泉だったり、料理だったり色々ありますけども、ウチの大元は、もう、この建物だと思ってますから、これが基本だなと思ってますからね」。基本を大事にするという事は、それこそ商売の基本だが、 アレもコレもと考える商売の中で、常にその基本を大事にする事は、案外難しい。熊本の日奈久温泉で、およそ100年間も磨きぬかれてきた「金波楼」の本当の魅力は、そんな基本を大事にする匠の心だった。

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