匠の蔵~words of meister~の放送

森島屋【老舗菓子店 長崎】 匠:森川賢二さん
2014年03月29日(土)オンエア
島原銘菓『ざぼん漬け』の元祖として知られる寛政5年(1793年)創業の老舗菓子店『森島屋』の八代目、森川賢二さん。『ざぼん漬け』は大航海時代に水の代用品として船に積まれ、ヨーロッパから日本に伝わったという柑橘類『ざぼん』の肉厚な皮を砂糖漬けにした逸品で、明治35年に『森島屋』の五代目が考案して以来、宮内庁に御買上げされた他、160を超える金銀杯を受領している。
「『森島屋』の屋号は、『森岳城』の『森』と『島原』の『島』から名付けたモノなんですが、島原では南国の果物である『ざぼん』がよく育つことから、五代目が日持ちの良い砂糖漬けにしたお菓子を開発したんですよね」。そんな他では真似できない独特の製法によって生まれるという『ざぼん漬け』は、その珍しさから今でも全国各地からお取り寄せされているという。
「この『ざぼん漬け』は、毎年10月から11月の間、まだ青い時期に採った『ざぼん』を冷凍庫で保存して、使う分だけ砂糖で炊いているんですよ。他所ではドライフルーツのように乾燥させた『ざぼん』を使うことが多いのですが、うちでは『それでけはするな』と、ずっと言われ続けてきたんですよね。ですから冷凍庫がなかった時代は、夏を越せずに7割から8割の『ざぼん』が腐っていたそうです」。それは、黄色に少し青みが残る美しい色彩と、しっとりとした歯触り、そして、新鮮な風味を大切にしたいという先代の想い。例え『ざぼん』は腐ろうとも、生にこだわる『森島屋』の伝統は、腐ることなく森川さんの代に受け継がれていた。
「昔は10月になると『新ざぼん漬けあります』と、新米ができた時のような売り文句があったそうですが、今は冷凍庫のおかげで一年中、新鮮ですからね。ただ『ざぼん漬けあります』と謳うだけです」。そんな『森島屋』では森川さんの父である先代が、昭和30年代に『ざぼん』の丸い形を残した、『丸ざぼん漬け』を開発。『ざぼん』1個をまるごと砂糖漬けにした姿は、口だけでなく目まで楽しませてくれる。
「時代と共に人の舌は変わっていきますから、伝統ある商品でも見た目や味を、今の時代に合わせていく必要はあると思います。しかし、味に関しては食べた人に気づかれずに変えていきたいんですよ。例えば最近は健康志向ですから糖度を気にされる方が多いですよ
いるんですよ」。日持ちも考えられている『ざぼん漬け』は甘さが命。故に森川さんは、いくら時代が甘さ控え目をもてはやそうとも、その甘さを落とすことはないという。しかし、森川さんは頑なに時代を無視している訳ではない。きちんと客の健康を気遣い、甘さを落とさずに糖度を落とすという卓越した技術によって伝統の味を守っている。
「現在は『ざぼん漬け』の製造を辞めたお菓子屋さんも増えてきましたが、島原銘菓である『ざぼん漬け』を、絶対になくしたくはないんですよ。ですから今後は新しい『ざぼん』のお菓子を作っていくなどしながら、もっと『ざぼん』の知名度を上げて、そのベースとなる『ざぼん漬け』を守っていこうと思います」。そんな森川さんの座右の銘は『正直に、コツコツと』。そうして製造される『森島屋』の『ざぼん漬け』は、これからも島原の銘菓として多くの人から愛され続けることだろう。

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