自家製の強力自然発酵による完熟堆肥のみで大切に育てられたブランド野菜「さくら野菜」を栽培する「馬場農場」の馬場浩美さん。馬場さんは農家のきょうりょく協力を得て、除草剤や消毒剤など、あらゆる農薬を一切使わずに年間で40〜50種類の「さくら野菜」を栽培している。「桜の花は年に1回、それも1週間から10日くらいしか咲かないように、はっきりとした季節感がありますよね。本当の旬の時にしか味わえない、その旬の味を大切にしたいという想いから、さくら野菜と名付けました」。そんな馬場さんは、農薬を一切使わずに堆肥で野菜を作るという考えのもと、20年前から堆肥作りに取り組み、野菜のアクや苦味に繋がる硝酸窒素の少ない堆肥作りに成功。その完熟堆肥で栽培した「さくら野菜」を生み出す。「土の微生物の分解した生きた栄養のおかげで、さくら野菜は火の通りが良く、全体的に甘味があり、昔ながらの懐かしい味がすると思います」。当時はスローフードなどという言葉も生まれていない時代。その馬場さんたちの取り組みは、なかなか周囲に理解されなかったと言う。「当時は、夢みたいなことばかり言ってと言われ続けましたが、食べた人の美味しかったという言葉と、協力して下さった農家の人の言葉に励まされ続けながら、なんとか今までやってこられたという感じです」。そんな馬場さんは、5年前に亡くなられたご主人の意志を受け継ぎ、この「さくら野菜」を広めようと日々奮闘。現在、地元・宮崎のほか、福岡、大分、鹿児島で販売を展開するほか、平成22年秋には宮崎市内で、「さくら野菜」を使ったオーガニックレストラン「ポルトフィーノ」をオープンさせる。「この野菜の作り方を日本全国に伝えたい、広めたいという夢があったんですよね。彼がよく言っていたのは自分が食べられないモノを、人に食べてもらうようなことはしてはいけない。例えば、コップのお水に目に見えない程度の農薬を入れて、さあ飲めとは言えないですよね。まったく体に害がないと分かっていても、それは飲めとは言えませんよね。そういうことをしてはいけないと。そして、自分たちの利益の為に土地を汚してはいけないと。そういうことを言う人だったので、その想いっていうのは、受け継がないといけないことだと思っています。本当に一生懸命、このさくら野菜を人に広める為だけに、亡くなるまで一生懸命頑張っていたので、やっぱりこれは、ここで終わりにするのはいけないかなと思いますね」。食べる人の姿を想像しながら栽培される「さくら野菜」。馬場さん夫妻の夢の結晶であるその「さくら野菜」は、人にも土地にも優しさに満ち溢れたモノだった。「今後は無農薬で野菜を作ることができるという姿を、子どもたちに見てもらうような展開を考えたいですよね。そして、良いものはやっぱり広げていきたいので、もっと多くの人に、このさくら野菜を知ってもらえるように頑張りたいと思います」。
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