古くから胡麻が栽培されていたという鍋島藩の城下町にある胡麻専門メーカー「株式会社まんてん」の社長・高尾秀樹さん。高尾さんは、約10〜20年前まではグラム1円と言われていた胡麻を、その10倍となるグラム10円にまで価値を高めた前の会社の理念と信条を引き継ぎ、2001年3月に会社を立ち上げたと言う。「安心・安全の理念に基づき立ち上げた会社ですから厳選した原料選びと手作業で行うという工程は、どんな事があろうとも譲れません」。その日の気温や湿度によって仕上がりが変化する胡麻を、熟練の職人が毎日、自らの五感で確かめながら、最高の煎り加減とすり具合で仕上げているという「まんてん」の胡麻は、味と香りが際立っており、すり胡麻にしてもベタつかずサラサラになるそうだ。「胡麻は健康素材としては認知されていますが、具体的な効能はあまり知られていません。そのような胡麻の持つ様々な可能性を社会に広める事も、私たちの役割だと思っています。ただ良い胡麻を生産するだけではなく、社会のニーズに合わせて私たちも変化しなければいけません」。そんな高尾さんは、今後、さらに胡麻の可能性を広げる、新たな事にも取り組んでいくそうだ。「胡麻というのは、手を加えずとも一粒から2メートル位の高さの木に育つんですよ。本当に生命力溢れる植物なんですよね。ですから、その小さな実しか胡麻として認知されていないという事は可哀相だと思うんです。大きな葉も咲かせますし、頑丈な茎にもなりますし、一時期ですが綺麗な花も咲かせるんです。自己主張してそこまで大きくなる訳ですから、十分活かしてあげたいというか、活用してあげたいというのが、今後の夢ですね」。栄養が詰まっている胡麻の実は、生命力溢れる根であり、茎であり、花であり、その全部が生み出したもの。それが解って全体を活かしたいと言う高尾さんは、胡麻だけではない他の部分でも色んな活かし方を見出すに違いない。
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