2019年6月1日「学天則」
いまや人間と見分けがつかないものもあるほど精巧に作られているロボット。
リアリティを求めた人型ロボットのルーツは90年前に遡ります。
昭和3年に京都の展覧会に出展された東洋初のロボット「学天則」です。
身長は3.5m。全身が金色で、男とも女ともいえない不思議な顔立ち。
目を閉じて瞑想し、やがて考えがひらめくと目を見開き、にっこりと微笑むと手にしたペンでその考えを書きとめるという一連の動きをします。
観客たちが驚いたのは、人間そのままのしなやかな動き。
このロボットを作ったのは西村真琴さん。ロボット工学の専門家ではなく、阿寒湖のマリモの保護に尽力した植物学者です。
ロボットの名前「学天則」は「自然の法則に学ぶ」という意味。
西村さんは外国のロボットがモーターで歯車を動かす機械人形であることに反発を感じ、圧縮空気を使って筋肉の柔らかな動きに近いゴム管を動かす、自然界の生物...人間らしいロボットを作ったのです。
外国ではこのような発想と技術で作られたロボットの例はなく、学天則はその後ヨーロッパに運ばれて展示されました。
北海道の自然の中でマリモの研究をし、晩年は全日本保育連盟を結成して子どもたちの保育に力を注いだ西村さん。
自然と人間を愛するからこそ、やさしく微笑むロボット学天則を作ることができたのです。
|