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提供:創価学会
FM福岡(土)14:55-15:00
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2018年11月3日「家具の音楽」

『いつも片目を開けて眠るよく肥った猿の王様を目覚めさせるためのファンファーレ』...この謎に満ちた言葉は、じつはクラシック音楽の曲のタイトル。
作ったのはフランスの作曲家エリック・サティです。

サティは音楽会の異端児。
クラシック音楽はバロック、古典派、ロマン派と、時代によって変化してきましたが、その伝統の中で積み重ねてきた形式やルールにまったく縛られない作曲をしたのが、サティです。
若い時分、酒場のピアノ弾きとして暮らしていた経験から、客の邪魔にならない演奏、まるで部屋の家具みたいに当たり前のようにそこにある音楽をめざし、自らの音楽を「家具の音楽」と呼んでいました。

とあるコンサートホールのロビーの片隅にピアノが置かれていました。
ホールではオーケストラの演奏会が行なわれています。
やがて休憩時間になると聴衆たちがぞろぞろとロビーに出てきて、演奏の感想を述べあったりしてがやがや会話をしています。
ロビーのピアノの前にいつの間にか座ったサティは、ピアノを弾き始めます。
すると、その調べの素晴らしさにロビーにいる全員が会話をやめて、サティの音楽に聴き入りました。

その様子を横目で見ながら、ピアノを弾くサティはこう叫んだそうです。
「みんな、音楽を聴くんじゃない!お喋りを続けるんだ!」
変わり者と呼ばれたサティでしたが、今まで聞いたことのない新しい響きは、西洋音楽に多大な影響を与えたのでした。