2018年10月20日「座る金次郎」
薪を背負って本を読みながら歩く、勤労・勤勉の象徴といえば二宮金次郎です。
若くして苦労しながら一度は衰退した家を再興。
その手腕を買われて藩の役人に取り立てられ、名を尊徳と改めて、災害や飢饉にあった各地の村を復興しました。
金次郎の像はかつて全国の小学校に設置されていました。
しかしいまその像を見かけることはあまりありません。
学校の建て直しに伴って撤去されていったのですが、その背景には「子どもの教育方針にそぐわない」という理由があるようです。
「本を読みながら歩くのは危険。スマホ歩きを助長している」「子どもに働かせながら勉強させるのは児童虐待」という苦情まであります。
数年前、栃木県の二宮金次郎ゆかりの町に、新しく金次郎の像が設置されました。薪を置いて丸太に腰掛けて本を読んでいる姿です。
すると今度は「休憩しているだけ。こんな像は意味がない」「世論を気にするばかりの事なかれ主義だ」といった批判が出ました。
そんな賛否両論が渦巻く中、二宮金次郎の7代目子孫の方からこんな意見がありました。
「金次郎の像がダメとなれば、別の人物の像にするのが普通なのに、金次郎を座らせてまで残そうとする人たちの心に感謝している」
大切なのは形ではなく心。
大勢の人々に尽くし抜いた金次郎の精神が、子どもたちに受け継がれることを願ってやみません。
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