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提供:創価学会
FM福岡(土)14:55-15:00
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2017年7月1日「遥かな尾瀬」

夏がくれば思い出す、遥かな尾瀬・・・
貴重な動植物の宝庫・尾瀬は特別保護地区で車が乗り入れることはできません。
ただ昭和40年代には観光道路を作る工事が始まりました。

これに一人抵抗したのが平野長靖さん。
明治から続く尾瀬の山小屋の三代目当主で、道路建設が尾瀬の自然を破壊することを心配したのです。
しかし国が承認して予算が計上され、既に工事が始まった公共事業を平野さん個人が止めることはできません。
なんとか手だてはないものか・・・、思い悩んでいた昭和46年7月1日、環境庁が発足。それを知った平野さんは東京に向かいます。
就任したばかりの大石武一環境庁長官に直訴するためです。

平野さんを快く自宅に招き入れた大石長官は、話を聞くとすぐに尾瀬の視察を約束。10日後に尾瀬に出向き、平野さんの案内で丸3日尾瀬の山々を歩き抜いたのです。
見渡す限りの花の間を歩きながら、昼の弁当を食べようと草花の生えていない岩を探し回り、やっと見つけて座る大石長官を見た平野さんは
「この人は本当に自然に対する優しい目を持っている。きっと尾瀬は救われる」と確信しました。

それから1カ月後、観光道路の建設は中止。
国が承認した公共事業を、尾瀬に暮らす一人の男と自然を愛おしむ環境庁長官との出会いが覆したのです。